放射性物質:民間も国基準でと農水省が食品業界などに通知 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

農水省が食品業界などに、自主基準においても、国の基準以上の厳しい独自基準を設けることなく、国の基準値に基づいて判断することを求めています。

http://mainichi.jp/select/news/20120421k0000e040185000c2.html

(引用開始)
放射性物質:民間も国基準で…農水省 食品業界などに通知
(毎日新聞 2012年04月21日 11時37分(最終更新 04月21日 13時23分))

 食品の放射性物質への対応を巡り、農林水産省はスーパーや食品メーカー、外食産業など、270の業界団体に対し、国の設けた基準値を守るよう求める通知を出した。食品業界などでは、国よりも厳しい独自基準を設けている場合もあり、同省は「国の基準は十分に安全。異なる基準では混乱を招く」としている。

 食品に含まれる放射性セシウムについては、4月から一般食品で1キロあたり100ベクレル、牛乳や乳児の食品で同50ベクレルなどの新基準値が設けられた。今回の通知では、この基準が国際的にも厳しいものであるとし、過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため、自主検査においても基準値に基づいて判断することを求めている。

 また、企業の自主検査でも科学的に信頼できる分析が必要だとして厚生労働省に登録された機関を利用することを勧めている。

 ◇業界側からは批判も

農水省の通知に対して、食品業界などからは批判などが相次ぐ。 食材を組合員に配送している「生活クラブ連合会」(東京都新宿区)は取り扱うほぼ全品目で放射能検査を実施し、今月1日に国より厳しい独自基準を設定した。槌田博・品質管理部長は「より安全な食品を選択するのは消費者の権利であり、通知は過剰な要求だ。そもそも国の基準が安心だと思われておらず、それを押しつければ、ますます国は信頼されなくなる」と話す。

 キノコ類の生産販売大手「雪国まいたけ」(本社・新潟県)は昨年11月、出荷基準値に1キロあたり40ベクレルの独自基準を設け、今年3月には20ベクレルに引き下げた。同社は農水省の通知を確認していないとした上で、独自基準は維持する方針。担当者は「生産者保護の重要性も分かるが、社には基準をさらに低くしてという消費者の声が寄せられる。消費者のニーズに応える使命がある」と話した。【神足俊輔、古関俊樹、馬場直子】
(引用終わり)

これに対し、ネット上では国の姿勢を厳しく批判する書き込みが目立ちます。

たとえばこちら。
http://www.asyura2.com/12/genpatu23/msg/155.html

(一部引用開始)
より安全な食糧を求める権利は人々にはある。
それを否定しようということは、言語道断である。
こうした通知をする国家機関など、前代未聞である。

もともと国の基準が高すぎるから自主基準が生まれるのでしょう。
日本の国家の官僚組織はどこか狂ってしまって、主権者の国民に対して反逆行為を繰り返しています。断罪すべきですね。

酷い!酷すぎる!!
農水省狂ってる!
農水省は何の権限があってやってるんですかね?
国民に何かあったら、農水省の役人がどういう責任をとるのだろうか?

読売の馬鹿記者は100ベクレルの基準値でさえ、高濃度ということを知らないで書いているのか? まさかとしか言えない。100ベクレルが世界的に厳しい基準って
言われて、はいそうですと記事にするのか? であれば、裏づけも取らずにこいつは記者ではない。 ちょっと検索すれば、直ぐに各国の基準がでてくる。
記者は知っていて読者が誤認してくれることを期待して書いているとしか理解しようがない。
大手新聞社記者が、風評安全詐欺、読者は金を払って風評被害に有っている。

ここで騒いでも始まらん!
月曜日に農水省に抗議の電話、メール、FAXを嫌というほど送りつけてやらないと
効果がない。(これでもどこまで効果があるか…)
日本国民が一丸となって政府や官僚どもにぶつかって行くしかない。
暴走中の政府と官僚を止めるのは、もはや我々日本国民しかいないのだから。
(引用終わり)

他にも、2chでも。
http://logsoku.com/thread/engawa.2ch.net/poverty/1334971319/

ほとんどの書き込みが、この調子です。

やはり一般の人の認識はこのレベルなのだということを改めて知るとともに、一方で農水省の「通知」の配慮の無さと言うか戦略のなさにも、暗澹たる気持ちになります。

ネットにこのような書き込みをする人は、ECRRなどの情報を元にネット上で危険を煽る人たちの記事を読むことの多い人でしょう。そして、国・マスコミ・大部分の学者がグルになって、新しい食品基準が安全だというデマを流している、そして私たちネットを駆使できる人間たちだけがそれを知っている、そしてさらにはそれを知らない一般の愚かな人たちにも広めるべきだ、と思い込んでいるように思えます。

この記事と書き込みを見て、私が大事だと思うことは2つです。何度も何度も同じことを書いている気がしますが、また書きます。


1.放射性物質の危険性を、科学的に正しく理解することが最も基本

安井至先生のような、原発利権とは何の関係もない心ある学者は、何が科学的に正しいのかを冷静にずっと発信し続けてられています。

『市民のための環境学ガイド』の最近の話題は、内部被曝についてのシリーズです。
http://www.yasuienv.net/

最新の記事は1900年代初頭に蛍光塗料として使われたラジウムによる内部被爆を起こした職人の被曝量と健康被害について(驚くほどの被曝をしていたが、それでも意外にも低い。)その前には、(私が以前にアルジャジーラの番組で見た)ヒロシマの被曝医師、肥田舜太郎氏が最近著した(とされる)著書『内部被爆』の非科学性を冷静に見事に暴いておられます。

そしてECRRの唱える「低線量被曝の方が健康影響がかえって大きい」という説の非科学性についても、改めて書かれています。

しかし、このような科学的な意見は、ネットで危険を煽る・叫ぶ人たちには届いていないし、もし届いたとしても簡単に御用学者のレッテルを貼って信じないだけなのでしょう。

特に、先に引用した「阿修羅」のサイトのように反原発の立場の人が多く集まるところでは、放射線の危険性を意図的に過剰に高く見積もる意見が優勢になりがちです。

「次回、事故が起きたらこれでは済まない可能性がある」という考えで反原発の勢いを高めるのはいいかもしれませんが、被災地域の方が避難したこと、食品中の放射性物質の基準値が厳しく定められ運用されたこともあって、不幸中の幸いにも今回は直接の健康被害はほぼ全く起きないレベルであると考えられるのに、ECRRを初めとして原発を止めるために事実に反して現状の危険を煽る人たちがいること、そしてそれを信じて乗せられている人が多くいることは、たいへんに問題です。

なお、日本の4月からの新基準値が世界的に見て高濃度だとの書き込みがありましたが、一般の食品についての放射性セシウムの基準をまとめると、

コーデックス(国際機関) 1,000 ベクレル/kg
EU 1,250 ベクレル/kg
米国 1,200 ベクレル/kg
日本 100 ベクレル/kg

であるのが事実です。私はむしろ、福島の事故を受けた日本の基準としては低すぎる、従来の500ベクレル/kgでも十分に厳しかったので、それを維持したらよかったのに、と考えています。念のため。

日本生活協同組合連合会のこちらのサイトに、食品中の放射性物質問題についてわかりやすく中立的に説明されているのを発見しました。
http://jccu.coop/food-safety/qa/qa03_03.html


2.市民の「連帯」と、それを現実化する政策が大事

自分や家族の健康を守るためには、少しでも放射性物質による健康被害のリスクを減らしたい、そのためにはわずかでもそのような食品を口にしたくない、という発想そのものは、私も理解はできるところです。

しかし、福島第一原発の事故が起きてしまったことは残念ながら現実です。

このときに必要なのは考え方は、4/16の記事で書いた、「ICRP 111」の理念でしょう。すなわち、最も大きな被害を受けている福島を中心とした地域の皆さんと、その他の地域の住民とで「ある程度の不利益をともに負う連帯」が必要だということです。

科学的に考えて健康への影響が無視できるほど小さいのであれば、この地域の農産物や水産物を購入して、産業の復興を支え、生活再建のお手伝いに資するという市民の協力こそが本当は大事なはずです。

しかし、そんなきれいごとを言っても…というのも本音でしょう。

「安全」が大丈夫と言われても「安心」のためには、少しでも放射性物質の少ない食品を選びたいというのは消費者の自然な要求であり、それを見込んで商売としてより安心な食品を(高く)売りたいというのも、業者としての自然な発想です。

だからこそ、本当はここは政治的に解決すべき問題です。
したがって、農水省の出した方針そのものは、大きく間違ってはいないと私は考えます。

ただし、進め方があまりにもマズイです。

健康影響はほとんど無視できるレベルであること、そして福島と近隣地域の復興のために、その程度のリスクはあってもそれを国民に負担してもらいたい、と説得力を持って啓蒙し、理解と協力をお願いして納得を得た上で、業者に独自基準を設定しないよう要請するのが、本来、あるべき手順でしょう。

実際に行われたのは、ただでさえ国が何を言っても信じてもらえない状況で、いきなりこのような要求を「業界団体に通知」したようであり、これでは国民および業者の不審、反発を招くのは必至です。


本当に、食品の安全性に関する政策は(その他についてもそうですが)、全く混乱をきわめています。
政治家と官僚の資質が低すぎると言わざるを得ません。


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