http://www.afpbb.com/article/economy/2862104/8579729
(引用開始)
【3月2日 AFP】欧州連合(EU)が新たに導入した家禽愛護規定に、仏菓子職人らが悲鳴を上げている。フランスの菓子製造業者で作る全仏鶏卵産業組合(National Union of Egg Industries and Professionals、SNIPO)は1日、新規定を満たさない数か所の養鶏場が生産を中止したため鶏卵価格が高騰しているとして、早急な対策を取るよう訴えた。
フランスでは、EU産卵鶏福祉指令(European Union Welfare of Laying Hens Directive)に基づき、鶏をバタリーケージという狭いかごの中で飼育する方法が今年1月1日から禁止され、この規定に反する養鶏場が一時生産中止に追い込まれたことから、卵不足が起きている。
鶏卵の1週間当たり生産量は10%(約2100万個)減少し、その結果、2月の鶏卵価格は前年10月比で75%高騰した。SNIPOは「この不均衡で深刻な状況は2012年いっぱい続く可能性がある」と声明で警告。仏政府に対し、鶏卵の「生産量回復のための早急な例外的臨時措置」を求めた。
SNIPOは、このままでは菓子類やケーキ、菓子パン、ブリオッシュなどを値上げせざるを得なくなるほか、生産中止と従業員の一時解雇を強いられることになるかもしれないと警告している。
(引用終わり)
聞き慣れない言葉「バタリーケージ」とは、Wikipediaの養鶏の記事によると、
(引用開始)
75日齢ころからひなはケージで飼育される。卵を衛生的、かつ集約的に生産できるよう、バタリーケージで飼育されることが多い。日本の採卵養鶏場では約95%がバタリーケージ飼育である[3]。バタリーケージとはワイヤーでできたケージ(縦24cm×横35cm×高さ41cmサイズが一般的)の中にニワトリを2羽ずつ(日本の平均的な収容数)いれ、それを何段かに重ねて飼育する方式である。
(引用終わり)
写真で見ると、こんなもの。見たことありますね。

http://jpyingtaida.cs.alibaba.co.jp/product/105551625-big-picture.htm
EUでは、1999年に、2012年1月1日より「バタリーケージ」を禁止し、「エンリッチドケージ」に移行することを決定したそうです。
イギリスでは、このような動きが。
http://ishiipiyo.exblog.jp/15080754/
(引用開始)
イギリス政府はウェルフェア基準と採卵鶏の住環境の改善のため、
そしてバタリーケージ飼育での鶏卵生産を抑制するために
厳格な活動に着手すると公表した。
EUでは2012年1月1日よりバタリーケージが禁止になっており、
卵生産者はより大きく快適なケージー巣箱と爪とぎスペースを含んでおり、
より自然な行動が許される-で鶏を飼育することが要求されているます。
大臣は下記のように述べています。
「バタリーケージが禁止されて以降も、5000万羽のヨーロッパのトリが
いまだに粗末な環境下で飼育されてることは受け入れられないことである。
我々はこれらの移行にあたり、多くの時間を費やしてきたが、13カ国のEU諸国は違った。
イギリスの鶏卵産業はトリにとってより良い環境を保証するために約4兆円を掛けてきた。
(引用終わり)
として、このルールに従っていない卵の輸入を厳しく制限することを表明しています。
日本では、卵は「物価の優等生」と呼ばれています。
その説明が、毎日新聞にありました。
(引用開始)
◇相場、半世紀ほぼ横ばい 大規模・機械化でコスト抑制
なるほドリ 東日本大震災で卵が少なくなって値段も高くなったんだってね。でも、「卵は物価の優等生」って聞くよ。なんで、そう呼ばれているの?
記者 お店で売られているさまざまな物の価格(物価)は昔に比べ高くなっているのですが、卵の価格はあまり変わっていないからです。食品全体の消費者物価指数は、この半世紀で6倍になっています。でも、卵は取引の指標となっているJA全農たまごの相場価格で見ると、1960年は1キロ198円でしたが、11年も196円でほぼ同じです。オイルショックなどの影響で70~80年代に1キロ300円を超えた時期もありましたが、90年以降はほぼ200円を切っています。かつて卵は高級品とされていましたが、今は大衆品に変わりました。
Q でも、どうやって価格を維持しているのかな。
A 最も大きな理由は、生産の大規模化と機械化です。60年の卵の生産農家は384万戸でしたが、11年には約3000戸にまで減りました。一方で、飼っている鶏の数は5500万羽から1億7500万羽に大きく増えています。昔は庭先で鶏を飼っている家も多かったですが、現在の大手生産者は大型の鶏舎で数十万羽を飼い、エサや水を与える作業も自動化しています。鶏が卵を産んでから店頭に並ぶまで、人の手をほとんどかけないシステムを構築している会社もあります。その分、コストは抑えられているのです。
毎日新聞 2012年2月23日 東京朝刊
(引用終わり)
3000戸で1億7500万羽ということは、1戸当たり平均約6万羽ですね。卵はまさに工業製品のように大量生産されていることがわかります。土地代の高い日本では、8段とか9段とかに重ねて飼育できるバタリーケージが必須なのでしょう。
バタリーケージがEUで禁止されたのは、「アニマルウェルフェア」という思想によります。
日経BPに分かりやすい説明がありました。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090831/177700/?ST=life&P=1
(引用終わり)
アニマルウェルフェアとは
アニマルウェルフェア(Animal Welfare)は「動物福祉」などと訳され、家畜(産業動物)については、「なるべくストレスを与えずに育て、と畜すべきである」という考え方です。基本原則は、1965年に英国のブランベル委員会が提言した「5つの自由」(下記)が基になっています。
飢え、渇き、栄養不良からの自由
恐怖と絶望からの自由
肉体的なそして温度上の不快感からの自由
痛み、傷害、病気からの自由
正常な行動を発現する自由
例えば卵を産む鶏であれば、生まれてから卵を産んでいる間の環境、卵を産み終えてから食肉用に処理されるまでの環境が、鶏にとってストレスなく幸せに過ごせているかどうか。
(中略)
ケージ飼養
採卵鶏は、通常ケージ(金網でできたとりかご)の中で飼育します。アニマルウェルフェアの観点なら、本来は田舎の家のように、囲いも無い広い庭で自由に生活して卵を産んでいた鶏をケージで飼うこと自体がそもそも問題なのですが、それでは卵が安定供給されなくなってしまいます。では、鶏にストレスを与えないケージの広さとは、いったいどのくらいなのでしょう。
一般的にケージの広さは経済効率だけを考えて決められています。通常は60cm×40cmのケージに7羽程度を飼育しています。しかもこのケージには上40cmくらいのところに天井がついています。これが日本の標準的な大きさになります。
EU(欧州連合)では、2003年より従来のケージを使用する養鶏場の新設は禁止されており、2012年までに、採卵種の鶏を従来のケージで飼うことが全面禁止されます(ただし、経費などの面から実現できるかどうか分かりません)。EUで推奨されている新しい飼い方は、1羽あたり750平方センチ以上の大きさが必要となり、止まり木などが必要になります。最低でも、日本の標準的サイズの倍の大きさが必要になります。
(中略)
このように、私たちの食生活のために生きている動物たちの生活が、一生が幸せかどうかは真剣に考えていく必要があると思っています。今すぐに対処できなくても、「今後どうあるべきか」について。
(引用終わり)
アニマルウェルフェア対応鶏舎とはどんなものか、説明された記事もみつけました。
http://www.alive-net.net/animalfactory/fact/AW-keisya.html
私自身、まだ自分の意見がまとまっていません。きれい事に過ぎない感じもしない訳ではないです。特に最後には殺して食べてしまうという罪深いことをする場合には、ウエルフェアとか言っても、どこまでの意味があるのか。ベジタリアンになるのなら、また大きな意味があると思いますが。
ただ、少なくとも我々が食べる卵や肉がどのように生産されているのかを知っておくこと、そしてそれについて考えることは大事なことと考えます。
最後に、以前に読んだ本を紹介していきます。
世界屠畜紀行/内澤 旬子

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→現在は、文庫本も出ているようです。(角川文庫 900円)