福島第一原発 「冷温停止状態」達成宣言 → 1号機「メルトアウト」疑惑 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

野田首相が、東京電力福島第1原発の原子炉が「冷温停止状態」になったと宣言しました。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111217k0000m040064000c.html

(引用開始)
野田首相:「原子炉は冷温停止状態」 事故収束を宣言

 政府は16日、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)を開き、東京電力福島第1原発の原子炉が「冷温停止状態」になったとして、事故収束に向けた工程表のステップ2完了を確認した。首相は「原子炉は冷温停止状態に達した。安定状態を達成し、事故そのものは収束至った」と事故収束を宣言。今後は除染、住民の健康管理、賠償に全力を挙げる考えを示した。だが、近隣住民の帰還にめどが立たない中での「収束宣言」には批判が出ている。

 首相は会合後、首相官邸で記者会見し、「事故との戦いすべてが終わるわけではない。ステップ2が終わったから、政府が対応で手を抜くとか、福島からどんどん力をそいでいくということは全くない」と強調。その上で「原子炉自体の安定を目指す段階から、廃炉に向けた段階へと移行する。政府として改めて今後のロードマップを明確にし、発電所の安全維持に万全を期しながら、廃炉に至る最後の最後まで、全力を挙げて取り組んでいく」と語った。

 政府と東電は4月17日に発表した工程表に基づき、原子炉を安定的に冷却することを目標にしたステップ1の達成を7月に宣言。ステップ2完了の目安となる冷温停止状態を、「原子炉圧力容器底部の温度がおおむね100度以下」「格納容器からの放射性物質の放出の管理・抑制」と定義した。当初「10月中旬から来年1月中旬」の完了を目指していたが、細野豪志原発事故担当相が9月の国際原子力機関(IAEA)年次総会で、前倒しして「年内完了」を表明していた。

 政府は他の事故関連の施策でも年を越す前に一定の道筋を示したい考え。住民の避難区域については、現行の警戒区域と計画的避難区域という2区分を見直し、年間の放射線量に応じて新たに3区分に再編する方針で、18日に細野原発事故担当相らが福島県を訪れ地元自治体に説明。地元と協議した上で年内に公表する。帰宅が困難な区域は土地の買い上げを含む住民の生活支援策を検討する。

 事故を起こした1~4号機の廃炉に向けた中長期の工程表も年内に発表する。(1)使用済み核燃料プール内の燃料を回収(2)格納容器を修復し全体を水で満たす(水棺)(3)溶融した燃料を取り出す--という3段階で、最長40年を見込んでいる。

 だが、1号機は燃料の大半、2、3号機は6割程度が圧力容器を貫通し、外側の格納容器に落ちたと推定されている。また、原子炉内部の状況を把握できない状況が続き、廃炉には厳しい作業が予想されている。さらに、炉心を冷却するために使った水は大量の汚染水となって、最近も海に流出するなどトラブルが続いている。

 原発事故は3月11日の東日本大震災に伴って発生。すべての電源を失って炉心は冷却できなくなり、大量の放射性物質が放出され、事故の深刻度を示す国際評価尺度は86年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)と同じ最悪のレベル7となった。【笈田直樹、中西拓司】
(毎日新聞 2011年12月16日 20時44分)
(引用終わり)

これを読んでいくつか確認したことがあります。

最初は、政府の宣言は原子力発電所内部のことに限定して事故が収束した、とはっきり言っているのに、問題を近隣地域の除染と混ぜこぜにしてしまって、被害をこうむった近隣住民に取材して「収束したのでしょうか?」と批判しているマスコミが目につく(この毎日新聞もNHKも)ことに、いらだちました。

しかし、その後、もっと重要なことに気がつきました。以下、その点について書きます。

まず、「冷温停止状態」とは何なのでしょうか。

「原子炉圧力容器底部の温度がおおむね100度以下」がひとつの要求事項ですが、現実には「1号機は燃料の大半、2、3号機は6割程度が圧力容器を貫通し、外側の格納容器に落ちたと推定されている」のですから、1号機の圧力容器の温度は上がるはずはありません。そうすると「格納容器の温度」も確認しなければ、安全に維持されているとは言えないのではないのか、ということです。

この点を確認しようと調べたところ、少し前ですが11/17の政府・東京電力共同記者会見の記事に、このようなことが書かれているのを見つけました。

http://genpatsu-watch.blogspot.com/2011/11/2011-1117.html

(引用開始)
原子炉の状況だが先ず、圧力容器底部の温度が1号機で 37℃、2号機で 69℃、3号機が同じく 69℃と、何れも 100℃以下の状況になっている。

また、今回、一枚紙のところでも新たにお示ししているが、格納容器内における温度も、1号機で 39℃、2号機で 70℃、3号機で59℃とこちらも 100℃を大幅に下回った状態で安定した状況が続いている。格納容器内は下部から上部まで多くの場所で温度測定をしており、全体的に同じ傾向を示している。

これまで燃料の場所をめぐり、それが圧力容器の中に留まっているのか、格納容器の所に落ちているのか、様々な議論があり、それに対する一つの私どもの説明としては、格納容器にあるものも圧力容器にあるものも含めて安定的に冷却をすることができていると考えている。
(引用終わり)

最初、格納容器の温度もちゃんと低く維持されているじゃないか、よかった…、と思いかけましたが、その後で、これはヤバイ!と思い直しました。

1号機の圧力容器の温度が37℃、格納容器も39℃で、2号機・3号機と比べて非常に低いです。これは1号機だけ冷却がしっかり行われているというよりも、1号機では熱がほとんど発生していないのではないかと考える方が自然に思えます。

福島第一原発のデータを収集していただいているサイトのデータを見ると、1号機も9月初め頃には90℃近くありました。それが12/16には35℃になっています。
2号機では、9月初め110℃が12/16に65℃、3号機では、9月初めに100℃程度が現在は60℃です。
http://atmc.jp/plant/temperature/?n=1

1号機の温度の下がり方が異常に早いです。

それが何を意味するのか?

12月1日に、1号機では格納容器に落下した核燃料が、コンクリートを65センチ侵食したとの報道がありました。

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20111201ddm001040056000c.html

(引用開始)
東日本大震災:福島第1原発事故 1号機燃料85%超落下 格納容器内、東電など解析

 ◇コンクリ65センチ侵食
 東京電力福島第1原発1号機で、炉心溶融(メルトダウン)によって原子炉圧力容器が破損し、85%以上の核燃料が格納容器に落下したとの解析を、経済産業省所管のエネルギー総合工学研究所が30日発表した。東電の解析でも相当量の核燃料が格納容器に落ちてコンクリートを最大65センチ侵食したと推計。核燃料は格納容器の外に漏れていないが、事故の深刻さを改めて示す結果で、政府や東電は廃炉作業などに活用する。

 同研究所は、詳細に原子炉内の状況を追跡できる方法を使用し、核燃料の損傷状態を試算した。その結果、1号機では地震による原子炉の緊急停止から5時間31分後に核燃料の被覆管が壊れ、7時間25分後に圧力容器の底が破損。核燃料の85~90%が格納容器に落下したと算出された。2、3号機でも約7割の核燃料が溶けて格納容器に落下した可能性があると推定した。
(引用終わり)

このニュースを耳にしたときは、コンクリートを「65センチ」侵食したと言っても、それがどの程度危機的な状況なのか、私のようなエンジニアでもよくわからないのに、大々的に報道してニュースキャスターがそれらしくコメントしているなぁ、という感想くらいしか持ちませんでした。

しかし、核心はそこではなかったのかもしれません。65センチとかいうまことしやかな数字に着目してしまいましたが、実は「核燃料は格納容器の外に漏れていない」というという考えを国民に刷り込むことにあったのでしょうか。

1号機の温度がどんどん下がってしまったのは、格納容器に穴があいていて、核燃料が少しずつ外に出て行っているからだ、ということはないでしょうか?


実は、核燃料は格納容器をも突き破って地面にめり込んでいるのではないか、という考えは、京都大学小出裕章助教がずいぶん初期から主張していたことでした。正直に言って、原発反対の意見を盛り上げるために、想像だけで最悪のケースを主張してあおっているだけではないかと見えて、私はあまり本気にしていなかったのですが…。

http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/07/09/gendai-jul-8/

(引用開始)
 6月7日に公開した国際原子力機関(IAEA)への報告書で、政府は1~3号機で「溶融貫通」している可能性を認めた。これは、炉心溶融(メルトダウン)した核燃料が、原子炉圧力容器を突き抜け、さらに外側の格納容器にまで流れ落ちてしまう「メルトスルー」という状態だ(右の図参照)。

 だが「福島第一はもっと絶望的な状況にある」と指摘するのは、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教である。

「溶けた核燃料であるウランの塊=溶融体が、格納容器の底をも破り、原子炉建屋地下のコンクリートを溶かして地面にめり込んでいるのではないかと考えています。核燃料の炉心部分は、2800℃を超えないと溶けません(現在の温度は高い放射線量のため測定不能)。溶融体の重量は100tにもなります。圧力容器や格納容器の鉄鋼は1500℃程度で溶けてしまいますから、溶融体は原子炉建屋地下の床に落ちているはずです。その一部は地下の床を浸食し、一部は汚染水に流され周囲の壁を溶かしているでしょう」

 これは核燃料が原子炉建屋の外部に直接漏れ出て、周囲に超高濃度の放射性物質を撒き散らす「メルトアウト」と呼ばれる最悪の状態だ。小出氏が続ける。

「もし溶融体が地下水を直撃していれば、いくら循環冷却しても放射性物質の拡散は防ぐことはできません。地下水の流れを止めない限り、周囲の海は汚染され続けるのです。汚染を防ぐためには、原子炉建屋の地下の四方に遮蔽壁を作るしかないでしょう。溶融体や汚染された土壌と、地下水の接触を断つのです」
(引用終わり)

しかし、1号機の燃料も本来ならまだ熱が出続けているはずです。燃料が燃焼するような化学的に熱が出る場合と違って、核反応の場合は冷えて止まるとか、発熱量が少なくなるということは一切ありません。それなのに圧力容器でも格納容器でも温度がほとんど上がらないとすると、これらの中に核燃料がわずかしかないのだと解釈することが妥当と思えます。

そうすると、小出助教の説に信憑性がでてきます。1号機の核燃料は、12月1日に報道されたようにコンクリートを65センチ侵食したところで止まったのではなく、小出助教の推定のように、既に格納容器の底に穴があいて大部分が外に出てしまっている!?

そうだとすると、これまた小出助教の言うように、地下水を汚染している可能性があり、汚染を防ぐためには地下数十メートルの遮蔽壁を設置するしかないのかもしれません。


このようなことは東電の技術者は当然気づいているはずで、それは政府にも伝えられているものの、あまりにも問題が大きすぎて発表する訳にはいかないと判断し、わざわざ65センチまで侵食した(しかしそこで止まった)と発表した上で、「冷温停止状態」を宣言するという選択をした、などということはあり得るでしょうか。


…うーむ。

このような私の推定が間違っていれば幸いなのですが…。