NHKスペシャル 「証言記録 日本人の戦争」 ~NHKの良心 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

昨日、「坂の上の雲」の総集編を見るともなしに見ていて、それが終わってもテレビをそのままにしていたら、続いて「NHKスペシャル『証言記録 日本人の戦争』第1回 アジア 民衆に包囲された戦場」の放送が始まりました。

元日本兵のおじいさんたちや夫を送り出したおばあさんが、自分が戦時中に体験したことを証言していきます。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/111203.html

(引用開始)
太平洋戦争開戦から70年。戦争証言プロジェクトでは、戦争体験者の証言を4年にわたり収集してきた。その数は、元将兵や市民を合わせ、800人以上にのぼる。証言の大半を占めるのは、無惨で生々しい「死」の記憶である。日中戦争から太平洋戦争に至る“昭和の戦争”の死者は、日本人だけで310万人。この夥しい死は、単に軍部の誤った戦争指導によってのみ、もたらされたのではない。“昭和の戦争”は国民の圧倒的支持を受けて始まった。その中で、日本各地の村々から大量の兵士たちが戦場に送り込まれていったのである。近年、こうした総力戦の実態を示す資料の発掘が各地で進められている。長野県の村に残る、戦死者の村葬の詳細な記録。そこには戦死者を“英霊”として称え、遺族に対して手厚い援助を行い続けた村の姿がある。そこから浮かび上がるのは、兵士の「潔い死」を美徳とする「故郷」の姿である。第1回は、常時数十万を超える大量の兵力が動員された“大陸”を舞台に、戦場と銃後が一体となって推し進めた“昭和の戦争”の実像を証言で記録する。
(引用終わり)

目の前で戦友の頭が吹き飛ぶ
若い兵士が餓死していく
死体の腐臭の中での食事
上官が現地女性を強姦
ゲリラに殺されて耳を切り取られる
戦死した友人の腕は重くて運べないので指を切って持ち帰り、炊飯時の火で焼いて遺骨に
愛する夫が乗る船が沈没 遺骨はなくその代りに沈んだ海の珊瑚
自決 ~生きて虜囚の辱めを受けずという言葉が重荷に
母、父、妹を射殺
飢餓により人肉を食べる

これが戦争の真実。
どこにでもいるようなご老人が、実際に戦争を体験した証言をとつとつと語る言葉には説得力がありました。重い証言です。

今ではイスラム原理主義者による自爆テロをニュースで見て、何と野蛮とか狂っているとか思う日本人ですが、ついこの間まで日本人の大部分がそのような考えに染まっていたのです。

現在の思想によって過去の考えや行動を安易に批判することには慎重であるべきと思いますが、我々は歴史から謙虚に学ばなければなりません。


ネット上ではこの番組について、自虐番組だとか、偏向だとか、日本だけが悪いわけではない、とかいう批判的な書き込みもたくさん行われていますが、こういう書き込みをするのはどういう人たちなんでしょうね?国際的な紛争は武力で解決すべきと考え、そのためには自分が先陣を切って弾丸飛び交う最前線に飛び込んでいこうという人・・・なわけはないでしょうね。

私は、戦争には反対の、弱虫の平和主義者です。どの国とでも出来る限り仲良くすべき、と考えます。
指導者がひどい国もありますが、草の根外交ででも市民の間で平和を維持できればいいのにと考えます。(夢想しているだけですが。)

家族を守るためには勇ましく敵国人を殺しに行く、なんてことは考えられず、そんなことが起きたら家族をつれてさっさとどこか関係のない外国に逃げるだろうと思います。
日本は好きですが、お国のために命を捨てるのも、他人を殺すのも嫌です。

昔読んだ本で、人は、「たまたま」自分が所属したグループになぜか忠誠心を感じるようになる性質を持っている、と書かれており、なるほどと思いました。

例えば、自分とは全く縁もゆかりもない日本人が、知らない中国人に殺されたとしましょう。日本人も中国人もどちらも全く知らない人なのに、日本人にシンパシーを感じて、中国人全般に敵意を抱くようになる。自分は日本人というグループに所属し、その立場から中国人というグループ全体に怒りをぶつける。よく考えるとこれは本来、全く理屈の通らないことです。知らない人同士の問題なのですから。

そしていつも思うのですが、自分の所属するグループをどう捉えるかで、戦争への態度も変わると思います。一例として、中国の指導者が日本を非難して、戦争をしかけそうになり、日本の指導者もそれを受けて立ちそうだという状況が起きたと仮定します。このとき、
(日本の指導者・市民) 対 (中国の指導者・市民)
という対立軸ではなく、
(日本・中国の指導者) 対 (日本・中国の市民)
という対立軸で自分の所属グループを捉えられたらいいのに、と考えます。

気をつけなければならないのは、市民が自ら熱狂的に指導者とその政策を支持してしまうこと。日本軍もナチスもそれぞれ当時は国民の強い支持があったのですから。どれだけ醒めた目で指導者を見られるか、どれだけ異なる意見が認められるか、それをしっかり守らないと、あらぬ方向に連れて行かれる恐れが強まります。


さて、私は11/29の私の「坂の上の雲」についての記事で、こんなことを書きました。

http://ameblo.jp/tomamx/entry-11092398765.html

(引用開始)
うーん、きな臭いですね。なぜ安倍晋三が「坂の上の雲」の映像化をNHKに進めさせたのか(それが本当なら)。
来月から始まる第三部では、日露戦争の旅順総攻撃、二〇三高地、日本海海戦と、日本の軍隊が強敵ロシアを破るという内容になります。日本軍が戦争でロシア軍を打ち負かす映像で、スカッとするようなものになるのでしょう。

英雄だけが戦争を行っているのではないのだ、勝っても負けても戦争では双方の国の尊い命が多数失われるのだという戦争の現実について、NHKがどこまで描くかですが、まずそのような作りにはしないでしょうね。

自民党・安倍晋三は、「坂の上の雲」の映像により国民の間に軍隊賛美の世論を盛り上げ、外国と戦争ができる正式な軍隊を持てるよう、憲法を改正につなげることを狙っているということでしょうか。
(引用終わり)


この戦争反対番組「証言記録」は、今後も「坂の上の雲」の放送に引き続いて放送されるようです。

軍国主義に利用されるのを恐れて著者司馬遼太郎が映像にすることを禁じていた「坂の上の雲」。その映像化を行ったのと同時に、軍国主義・戦争賛美の方に世論を誘導しないよう、バランスを取る意味でこの番組を制作し、この時間に放送することにしたものと理解できます。

国営放送のNHKにもまだ良心はあるようで、幸いなことです。
素直に評価したいと思います。

本当に「坂の上の雲」が安倍晋三の働きかけで制作されたとして、ようやく二百三高地、日本海海戦といった戦争を軍上層部の視点から面白く描く映像に安倍がほくそえんでいたら、続いてこの番組が放送されているのに気づいてひっくり返った、なんてことはないでしょうか、ね。


※「坂の上の雲」の方自体でも、一般人の死を結構描いていますね。

http://www9.nhk.or.jp/sakanoue/story/10/
(引用開始)
第三軍の戦いを描くうえで重視したのは、司令官たちだけの物語にしないということ。何万という兵がいてそこには多くの死があったことをリアルに表現するために、無名の兵士を演じる役者さんをオーディションで選んだ。彼らは自衛隊への体験入隊や、陸軍の考証家による当時の戦い方の訓練を経てロケに参加。歩兵、砲兵、騎兵など、あらゆる場面で活躍した。単に迫力ある戦闘シーンというのではなく、人間の行為をつづったドラマとしての特色を色濃く表現している。
(引用終わり)