一時はこればかり書いていた福島第一原発について、忘れたわけではありません。
久しぶりに何点かまとめて書きます。
(1) NHKスペシャル「シリーズ原発危機 安全神話 ~当事者が語る事故の深層~」
先日、NHKでこのようなタイトルの番組が放映されました。私もこちらで見ました。
東京電力のOBが、なぜ東電では十分な危機対策が行われなかったのか、語りました。
その証言を引き出しただけでも快挙ではありますが、その他人事・評論家のような発言は、ネット上ではさまざまに批判されています。
その中でも、元東京電力社員の開業医という特異な経歴の「院長の独り言」のサイト(以前にも紹介したことがあります)では、ほとんどの証言者を知っているというから驚きですが、やはり強く非難されています。
http://onodekita.sblo.jp/article/51164080.html
ここから証言者の発言をピックアップさせていただくと、
トップバッター 笛木氏(当時 発電部長)
「規制がなければ、大金をかけることはできなかった。自主的というのはない。」
2番手 服部拓也氏(当時 発電部副部長)現 日本原子力産業協会理事
「絶対安全だという今で言う安全神話みたいなものがまかり通っている時だった。そういう意味でおおっぴらに(安全対策を)検討することすらはばかられた。相当安全に対する防御の厚みは熱くしたという風に思ってしまった。「いや もっとこんなことがあるのではないか』という議論が不足していた。」
私は、全ての原子力発電所を今すぐに停止せよという意見には簡単に賛成できませんが、全ての原発がこのような安全神話に基づいて設計・運転されているのでしょうから、もう一度しっかり、しかも原子力村の住人でない第三者が徹底的な安全確認を行うべきと考えます。
(2) 東電社内調査中間報告
東電の社内事故調査委員会が中間報告書を2日に発行しています。
これまた、強く非難されています。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20111203ddm008040087000c.html
(引用開始)
東京電力福島第1原発事故で、東電の社内事故調査委員会が2日に発表した中間報告書は、「結果として、これまでの安全対策で事故拡大を防げなかった」と言及。130ページ中、「結果として」「結果的に」との文言を計25カ所多用し「原因は想定外の津波」と従来の見解を繰り返した。信頼回復には情報公開に徹し、責任の所在を明らかにするのが大前提だが、自己弁護に走るようでは道のりはほど遠い。
(中略)
社外の検証委員会は、報告書に対する意見で「安全神話から抜け出せなかったことが原因」と指摘したが、山崎副社長が会見で「見解が違う。できる限り安全対策に努めた」と反論する場面もあった。
(引用終わり)
この期に及んで、まだこのような体質。
OBはようやく安全神話を認めたけれど、現役副社長はそれすら認めないのですね。
東京電力には、やはりこの事故を正面から受け止めて深く反省し、二度と起こさないためにどうすべきかを真剣に考える意思も能力もないようです。こんな会社に原子力発電所を任せることはできません。
(3) 吉田所長、病気のため退任
福島第一原発の吉田所長が、病気のために退任することになりました。
病名はプライバシーのため伏せられていますが、「被曝とは関係ない」とされています。
ネットでは色々なウワサが流れています。先ほどの「院長」氏は医者として病気を推定されていますが、素人の私はこれ以上、邪推することはやめておきます。
それよりも、後任の高橋毅氏は院長氏が最も尊敬していた上司だったそうで、今後この方に期待することにしましょう。吉田所長には今までのご苦労に感謝するとともに、病気からのご快復をお祈りいたします。
http://onodekita.sblo.jp/article/51109958.html
(4) 汚染水と浄化装置
私は、福島第一原発で導入された汚染水の浄化装置では、汚染水の増加を抑えられるだけで減ることはなく、雨水などの流入で今後も増え続けることを何度も指摘していました(…と偉そうに言うのも恥ずかしいくらいの当たり前のことですが。)
tomamの6月28日の記事
http://ameblo.jp/tomamx/entry-10969526975.html
(引用開始)
私は循環注水冷却ではなく、汚染水を単純に循環して冷却に使うべきだと何度も主張しています。そして、浄化システムは独立させて、処理された水は海に放流して汚染水を減らすべきだと。
この汚染水循環冷却の問題点は、今回のような漏れが起きた場合に、人が近づくのがより難しく、修理が困難になることでしょうか。そこは何とかアイデアを出してしのげるのではないかと思うのですが。
浄化されたきれいな水は、セシウムが既に溶けている汚染水よりも、核燃料に含まれるセシウムをより溶解させやすいので、この循環注水冷却では、核燃料からセシウムを溶解・運搬して浄化設備で高レベル放射性廃棄物を延々と製造し続けるシステムになっています。そしてキュリオン社とアレバ社は大儲け。
一方で、循環注水冷却では汚染水の量は増加が抑制されるだけで、全く減ることはありません。
発電所地域に降った雨水は、飛び散った放射性物質を含む瓦礫に接するので、放射性汚染水としてタンクに貯めなければなりません。したがってこれからも汚染水は徐々に増える一方であり、いずれタンクは満杯になる。その対策が何か取られているとは思えません。
こんなことを心配しているのは、私だけでしょうか?
(引用終わり)
その後、汚染水はどうなったのか、今さらながら心配になって調べてみました。
そしたら、こんなことになっていました。
まず、鳴り物入りで導入されたアレバ社の汚染水処理装置は停止している、と。あの自信満々の女社長の会社にいくら払ったのでしたっけ。キュリオン社の方だけで何とか運転?東芝のサリーちゃんも動いているのでしょうか。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111204k0000m040043000c.html
(引用開始)
毎日新聞 2011年12月3日 20時14分
東京電力は3日、福島第1原発敷地内の放射性汚染水処理システムで、米キュリオン社製装置の放射性物質吸着用部品を取り換えることで、浄化能力を向上させる計画を発表した。
従来は、放射性物質を吸着する軽石(ゼオライト)を入れた鉄製の容器に汚染水を通し、放射性物質濃度を数万分の1~数十万分の1に低減していた。新しい部品は吸着性能が高い「フェロシアン化合物」を添加したもので、6日に交換を予定している。
東電によると、キュリオン社製の装置が処理する汚染水の放射性物質濃度は11月1日現在、1立方センチ当たり約70万ベクレル。仏アレバ社製の除染装置と併用していた9月中旬までは安定的に数十万分の1まで除去できていたが、アレバ社製装置が稼働停止した後は性能が低下していた。
新たな部品を使うことで、キュリオン社の装置単体でも安定的に数十万分の1程度まで除去できる。また従来部品より使用期間が長いため、交換頻度が減り、放射性廃棄物も抑制できるとしている。
(引用終わり)
「性能が低下していた」って、飽和近くまで吸着して破過しただけのことのような…。その吸着剤を「部品」と呼んでいるのでしょうね。これはまさに高レベル放射性廃棄物ですので、作業者の安全に十分に留意するとともに、その保管場所の安全確保もしっかりやってほしいものです。
そして、汚染水は案の定増え続け、次々とタンクを設置し続けているようです。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201111170566.html
(引用開始)
2011年11月18日3時7分
東京電力福島第一原発の敷地内で、森林を伐採して放射能汚染水をためるタンクの設置が進められている。17日現在で容量は11万トンを超えた。上空から見ると、青色や灰色のタンクがずらりと並ぶ。汚染水は増える一方で、東電はタンクの増設に追われている。
原子炉を冷やした水や地下水が建屋地下に流れ込み汚染水としてたまり続けている。東電は汚染水を浄化処理などしてタンクにためている。タンク置き場は、かつては「野鳥の森」と呼ばれた敷地内の森林。東京ドームの8倍もの広さに相当する37万平方メートルを切り開いてつくった。
タンクの容量の8割にあたる約9万トンにすでに汚染水が入れられた。現時点で1~4号機の建屋地下に約8万トン残っている。東電はたまった汚染水を浄化処理して減らし、年内にゼロにする計画だった。しかし、地下水などの流入が予想外に多く、実現のめどは立っていない。
12月にタンクを6万トン分増設するが、原子炉内の燃料を10年は冷やす必要があり、それまで汚染水は出続けることになる。
(引用終わり)
「東電はたまった汚染水を浄化処理して減らし、年内にゼロにする計画だった。」って、どこをどうやったら減るのか、全く分かりませんが。どういうこと?さすがに東電が本気でこう考えているとは思えないのですが。現にタンクも着々と準備しているし。対外的にはゼロにすると発表しているだけでしょうか?
また、このタンクに増え続けている汚染水も今後、どうするつもりなのか、何か処理方法を考えているのでしょうか?まぁ、何も考えていないでしょうね。
タンクの材質がわかりませんが、海沿いですから鉄なら腐食しやすいです。(青色や灰色は防錆塗装?)いつの間にかタンクに穴があいて、海に流れていたけど気づかなかった、結果的に汚染水はなくなった、などというニュースを10年後くらいに聞くことにならないか、心配です。