続×4 「ヤマザキパンはなぜカビないか」 ~食品添加物の危険性と効果 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

このテーマ、まだ続きます。今回が最終回。

(5) 食品添加物の安全性と効果

食品添加物の分類やその安全性について、農水省・東京都福祉保険局のサイトや市民のための環境学ガイド、Wikipedia等の説明を噛み砕いてまとめます。

参考:
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/guide.html
http://www.yasuienv.net/FoodSafeUneyama.htm
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/shokuten/shokuten4.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%97%A5%E6%91%82%E5%8F%96%E8%A8%B1%E5%AE%B9%E9%87%8F


5.1 食品添加物の安全性

まず、食品添加物の安全性の考え方の基本をまとめます。

(a) 無作用量(NOEL; Non-Observed Effect Level)
  無毒性量(NOAEL; No Observable Adverse Effect Level)

ある程度(閾値、しきい値)以下の用量では毒性が現れないというのが毒性学の基本概念です。

動物での毒性試験を行い、生物学的なすべての影響について統計学的に意味のある差を示さなかった最大投与量を無作用量(NOEL)と言います。
 最近では、生体にとって有害であると思われる反応に限定した無毒性量(NOAEL)を評価に使うことが多いそうです。

(b) ベンチマーク用量信頼下限値(BMDL; Benchmark dose lower confidence level)

 難しげな名前ですが・・。
 発がん性についての動物実験では、何も与えなくてもある割合でガンになる個体がでてきます。そこで、その影響を考慮して、NOELとは異なる指標が用いられます。

 発がん性に関する動物試験から、用量-反応曲線を描きます。何も与えない場合に比べて10%だけ発がんが増加する投与量(これをベンチマーク用量(BMD)と言います。)のさらに統計的に安全側(95%信頼下限)を取った値をBMDLといいます。

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(c) 一日摂取許容量 (ADI; Acceptable Daily Intake)

 食品に用いられたある特定の物質について、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量を、体重1kgあたりで示した値を、一日摂取許容量(ADI)値をいいます。単位はmg/kg/day。

 具体的な算出方法は、動物実験によるNOAELに、安全係数をかけて求めます。安全係数として、一般の毒性(NOAEL)の場合は動物と人間との違い・個人差を考慮して100倍を用いますが、発がん性の場合(BMDL)の場合は10,000倍を用います。
 
(d) 食品添加物の使用基準

 食品添加物の使用基準(いくらまで添加してよいか)は、ADIにさらに安全係数をかけ、日本人の各食品の摂取量などを考慮した上で、使用対象食品や最大使用量などが決められています。


 実際に使用される添加物の量は基準値より少ない場合が多いですし、このように何重もの安全係数がかけられているので、その食品を食べ続けたとしても安全性に問題がないと言えます。

 それでも心配であれば、同じ食品を毎日食べ続けなければさらに安心です。


5.2 食品添加物の分類

(a) 食品衛生法上の分類 

 食品衛生法上では、指定添加物・既存添加物の他、天然香料・一般飲食物添加物に分類されます。

 厚生労働省のサイトにあった、国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部長の棚元憲一氏の資料
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/070122-2b.pdf
から抜粋します。

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 ここで合成添加物=指定添加物と書かれていますが、指定添加物には一部天然添加物も含まれているようです。

食品添加物の指定の基本的考え方は、

 国際的に安全性評価が終了し、安全性について問題なしとされたもの。
 国際的に広く使用されていること。
 科学的な検討が可能な資料が整っていること。
 使用が、消費者にとって利点があること。
 原則として、化学分析などで食品に添加した添加物が確認できること。

ということだそうです。
 食品添加物の指定は、事業者などからの要請を受けて、次のような手続きで行われます。

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 このように、指定添加物の安全性については、かなり厳格に行われていると考えられます。

 一方、既存添加物のほとんどは天然添加物です。
 これらは平成7年以前から使用されていた天然の食品添加物で、一部には未だに安全性が確認されていないものも含まれているようです。

 実際に、平成16年に「発がん性が否定できない」との理由で「アカネ色素」の食品添加物(着色料)としての使用が禁止され、既存添加物名簿から削除されました。
 (合成=危険、天然=安全ではないことのひとつの事例です。)

(b) 使用目的による分類
 添加物をその役割や効果の違いによって分類したものです。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/shokuten/shokuten2.html
から引用します。

<食品の製造や加工のために必要なもの>
 特定の食品の製造や加工の際になくてはならないもので、酵素、ろ過助剤、油脂溶出剤、消泡剤や酸

・アルカリなどの加工助剤などが含まれます。
例  豆腐を固める凝固剤
 小麦粉からラーメンを作る時に加えるかんすい
 ビールなどのろ過の際に使用する活性炭

<食品の風味や外観を良くするためのもの>
 食品の味や見た目を良くし、魅力的で品質の良い食品を作るために加えるもの。
 食品の色合いを良くする着色料・発色剤・漂白剤など、香りを付ける香料、味を良くする甘味料・調味料など、食感を良くする乳化剤・増粘安定剤などがあります。

<食品の保存性を良くし食中毒を防止するもの>
 食品の酸化・変敗、微生物の繁殖による腐敗などを防止して、食品の保存性を高めるためのもの。
 保存料や酸化防止剤の他に、殺菌料、防かび剤などがあります。

<食品の栄養成分を強化するもの>
 食品に本来含まれる栄養成分や人に必要な栄養素を、補充・強化する目的で加えるもの。
 ビタミン、ミネラル、アミノ酸などがあります。


5.3 食品添加物の安全性と使用についての個人的意見

 以上、食品添加物についての素人で利害関係も何もない一個人が、あちこち調べて理解したものをまとめました。これをふまえて、個人的意見を最後に書きます。

 まず、食品添加物の安全性については、基準に基づいて使用されている限り、毎日食べてもほぼ全く問題は発生しないと考えてよいだろうと考えます。

 特に、指定添加物(合成添加物)に関してはその安全性が動物実験によりしっかり確かめられ、十分な安全係数をかけて使用基準が定められているので、特に安全と考えます。意外かもしれませんが、危険があるとしたら、天然添加物(既存添加物)です。既存添加物は、その安全性がまだ確認されていないものも多いようだからです。

 その前提で、食品添加物の使用の是非についてですが、リスク-ベネフィットの関係でとらえるべきと考えます。そのために、用途ごとに考えるべきでしょう。

・食品の製造や加工のために必要なもの

 これがなければ製造できないものは、使用するしかないでしょう。その場合でも、より安全な代替品があるのであれば、そちらを使うに越したことはありません。

 臭素酸カリウムについては、より安全なアスコルビン酸を代替品として使う方法があるようです。敷島・神戸屋などは臭素酸カリウムの使用をやめましたが、山崎パンは使用し続けています。

 私は、この場合の安全性はまず問題ないと考えます。もちろん、不正な生産工程の変更や過失により臭素酸カリウムが残存する可能性はゼロではありません。(悪意を考えれば、使用していないと言っている製パン会社が使っている可能性も否定はできませんが。)

 山崎パンがバッシングされても使い続けている理由は柔らかさという品質にこだわっているからだと推定しますが、想像に過ぎません。個人的には、バッシングされるくらいなら使用をやめた方がいいのにと思います。

 製品には全く残存していないのに生産の途中で使用していることを明記していることは、消費者に選択の機会を与えているということから好ましいことと考えます。山崎パンが製品の製造に必要と考えていて、その安全性が科学的に確認されている以上、山崎パンを責めることは難しいと私は考えます。

・食品の風味や外観を良くするためのもの

 着色料や発色剤、香料などは微妙なところです。もちろん不要なものと考えてもよいですが、これらも食の愉しみのひとつと考えれば肯定されます。消費者としては、安全を気にするのであればできればあまり使用されていないものを購入するに越したことはないでしょう。最近はウインナーソーセージや辛子明太子、たくあんなどで昔のような人工的な色でないものが主流になってきているように思います。

 砂糖のかわりに人工甘味料を使用したものを食することは、糖尿病など成人病の予防という利益があり、リスク-ベネフィットで考えれば、私は肯定されると考えます。(実際、太り気味の私は、しばしば人工甘味料の炭酸飲料を選びます。)

・食品の保存性を良くし食中毒を防止するもの

 これはまさにリスク-ベネフィットで考えるべきです。食品添加物の健康への危険性と、食中毒による危険性とを天秤にかけて考えたらよいはずです。また、保存料を使用しないことで消費期限が短くなって食品の廃棄が増え、メーカー・販売者の利益減・価格のアップにもなりますが、地球環境にも悪影響が起きるという点も考慮に入れるべきでしょう。

 個人的には、安全が確認されている保存料の適正な使用は肯定できると考えます。ただ、世間の風潮としてはこれとは逆で、意見の分かれるところかもしれません。

 保存料など使っていないものを買ってすぐに食べきるようにすればいい、と口でいうのは簡単ですが、現実には難しいですよね。私など今は一人暮らしで自炊ですので、冷蔵庫には食べ残しの食品がすぐにあふれます。それで食中毒やカビによるガンなどになるくらいなら、許可された保存料による健康リスクなど取るに足らないように思えます。

・食品の栄養成分を強化するもの
 
 これは全く個人的な趣味による選択でしょう。適量なら健康にいいものも、過剰に摂取すると健康被害を起こしますので、同じものをあまり採り過ぎる事は危険です。
 


 本当に問題のある食品添加物を使用している商品があれば、それを好まないと考える消費者は「買わない」ということで意思表示をすることが出来ます。その数が多ければメーカーも考えを変えるかもしれません。

 東海漬物の「きゅうりのQちゃん」では、「買ってはいけない」による指摘などにより、1998年に保存料・合成着色料を一切使わない品質改良を行っています。


<最後に>

 1990年といささか古いですが、先に引用した国立医薬品食品衛生研究所 棚元氏の資料に興味深いデータがありました。ガンの専門家と主婦とがそれぞれ、人がガンになる原因は何だと考えているかのデータです。

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 今だったら、主婦が「放射線」がガンの原因と考える比率はかなり高くなっているでしょうが、それはともかくとして、この当時、主婦は、食品添加物が主婦がガンになる最大の原因と考えていたようです。そして2番目が農薬。これらはタバコよりもガンの要因だと思い込んでいたようです。現在でもあまり変化はないのでしょうか。

 これに対し、専門家は、「ふつうのたべもの」がガンの最大の原因で、次がタバコだと。食品添加物はごくわずか、農薬はゼロです。

 このような大きな認識の差があることは大問題でたいへん不幸なことです。

 「ヤマザキパンはなぜカビないか、それは発がん性の臭素酸カリウムが残っているからだ」といった、全く科学的な根拠なく、かつ何重にも事実と異なる情報を科学を装って伝える本が出版され、それが売れることは最悪です。

 第三者が科学的に冷静に、その安全性・危険性を消費者に知らせ、心配な消費者はヤマザキパンを買わなければいいと考えます。私が不十分ながら行ったのはこのような動きのつもりです。しかし、たいへんに微力・・・。

 松永和紀さんや畝山智香子さん、そして安井至先生などが、いくら科学的な情報発信をしても一般の人たちには届かず、渡辺氏のようなセンセーショナルな本の方だけは売れるという現実。

 どうすれば一般の人が、冷静に科学的に「正しく怖がる」ようになるのでしょうか???


 長かったですが、このテーマはひとまずこの辺で。(疲れたー。)