米国で、駐米サウジ大使暗殺計画容疑でイラン特殊部隊員起訴 イランは反発 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

中東関係で、きな臭い動きが起きています。

毎日新聞の記事が、事件自体とその背景について簡潔にわかりやすく書いています。

http://mainichi.jp/select/world/news/20111012dde007030002000c.html

(引用開始)
 【ワシントン白戸圭一】米司法省は11日、駐米サウジアラビア大使の暗殺を計画したとして、イラン革命防衛隊の特殊部隊「コッズ部隊」の男ら2人を国際テロリズム取締法違反などの罪でニューヨーク連邦地裁に起訴したと発表した。米側が「イラン政府内の枢要な組織が責任を負っている」(ホルダー司法長官)とイラン政府の組織的関与を示唆するのに対し、イラン側は「米政府によるプロパガンダ」(国営イラン通信)などと反発している。

 起訴されたのは、イラン旅券を保有する米国籍のマンソール・アルバブシア(56)▽コッズ部隊の隊員、ゴラム・シャクリ(年齢不明)の両被告。

 11日記者会見したホルダー長官らによると、アルバブシア被告は今年5月、メキシコの麻薬密売組織の関係者に150万ドル(約1億1500万円)の報酬を提示し、アデル・アルジュベイル駐米サウジ大使を爆殺するための要員の提供などを依頼した。アルバブシア被告はその後、シャクリ被告の承認を得て、報酬の前金100万ドルを麻薬組織側の銀行口座に振り込む手続きに関わったという。

 しかし、この麻薬組織の関係者は、米麻薬取締局への情報提供者だったために計画が発覚し、アルバブシア被告は先月29日にニューヨークで逮捕された。調べに対し、コッズ部隊の高官から暗殺を指示され、大使をワシントン市内の飲食店で爆殺する計画だったと証言しているという。シャクリ被告はイラン国内で逃亡中。

 事件を受け、米財務省は11日、両被告とコッズ部隊の司令官ら計5人を資産凍結制裁の対象に指定した。ホワイトハウスによると、オバマ大統領は同日、アルジュベイル駐米サウジ大使に電話をかけ、サウジ政府との連帯を伝えた。

 79年の革命で王制を打倒したイスラム教シーア派国家のイランは、スンニ派で親米の王制国家サウジと対立している。コッズ部隊は対外工作を行うイラン革命防衛隊のエリート組織だが、イラン政府は公式には存在を認めていない。
(引用終わり)

これに対する各氏の反応は、ロイターから。

http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-23585220111012?feedType=RSS&feedName=worldNews

(引用開始)
 ホルダー司法長官は記者会見で、イラン革命防衛隊の関与を主張。「イラン政府がわが国で行おうとしたことはおぞましく、懸念すべきこと」と述べた。

 クリントン国務長官はロイターとのインタビューで、イランへの制裁をこれまで躊躇(ちゅうちょ)していた国々も、制裁に向け一歩踏み出すだろうだろうとの期待を示した。

 オバマ大統領は「米国と国際法に対する甚だしい違反行為」と非難。サウジ政府も「卑劣」と、イランを強く非難した。

 これに対し、イランは関与を否定。同国国営プレステレビも「イランは、わが国が駐米サウジアラビア大使の暗殺を企てたとする米国の非難を否定する。これは作り上げられたシナリオだ」と報じた。

 イランのハザーイー国連大使は、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長への書簡で、米国による容疑者訴追は明らかに政治的意図があり、イランに対する長年の敵意の表れとして、強く反発している。
(引用終わり)

これに対して、ラジオイランの記事はこうなっています。

http://japanese.irib.ir/index.php?option=com_content&view=article&id=21783

(引用開始)
イランのハザーイー国連大使が、国連のバン事務総長に書簡を送り、イランがアメリカ駐在サウジアラビア大使の暗殺を計画したとするアメリカ政府の根拠のない主張に対し、イラン政府の激しい抗議の意を表明しました。

イルナー通信が伝えたところによりますと、バン事務総長に宛てたハザーイー大使の書簡では、イランは、一人の人物の信憑性に欠ける主張によって提示された、この根拠のない作為的な疑惑を、強く否定しているということです。

この書簡ではさらに、「どの国もこのような作り話によって他国を非難することは可能だが、それは国同士の関係に危険な手法をもたらすきっかけとなり得る」とされています。

この書簡では、過去2年間、アメリカの支援によりシオニスト政権イスラエルが実施した、イランの複数の核物理学者に対する暗殺について触れられ、「イランは常にあらゆるテロリズムを非難しており、それは自らがテロリズムの犠牲者であるからだ」と強調されています。

イラン外務省のメフマーンパラスト報道官は、11日火曜夜、アメリカにおける一つのテロ計画にイランが関与しているとする、アメリカ当局の根拠のない虚偽の主張に対し、あらゆる類のテロリズムを非難するとともに、「アメリカ人とシオニストによる長年の敵対政策に基づくこのような使い古された行動は、イスラムと地域の敵により、独特の筋書きに沿って、分裂工作を目的に追求される、こっけいな見世物と見なされる」と述べました。

イルナー通信が伝えたところによりますと、イラン国会のラーリージャーニー国会議長も、12日水曜、全てのテロリズムを非難するとともに、「アメリカはイランに対するプロパガンダを開始することで、自国内の問題とイスラムの目覚めから人々の目を逸らそうとしている」と述べました。
(引用終わり)


さて、アメリカとイラン、どちらかがウソをついています。
どちらでしょう?

きっとふつうの日本人なら、よく知っている(つもりの)米国が正しく、漠然と危険な国との印象がある(植えつけられている)イランがウソをついていると思うでしょうね。


しかし、よく考えてみましょう。

とりあえず、アルバブシア被告が本当にサウジ大使の暗殺を計画していたとしましょう。それを未然に防ぐことができた、と。そして逮捕したこの犯罪者が、「コッズ部隊の高官から暗殺を指示され、大使をワシントン市内の飲食店で爆殺する計画だった」と証言したとしましょう。

もしアメリカが平和を希求するまともな国家だったら、客観的に誰もが認めることができる証拠を提示することもなしに、ひとりの自国民の犯罪者の証言(だと自国が発表しているだけ)程度を根拠として、いきなり他国政府に対する「制裁」まで公言するでしょうか?

(…と書きましたが、逮捕後のアルバブシア被告が、米国がモニターしている中で、コッズ部隊のシャクリ容疑者に電話をかけた…と米国は言っているようです。

http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/12/iran-assassination-plot-saudi-ambassador?newsfeed=true

4-5 October Arbabsiar makes phone calls – monitored by US law enforcement agents – to Shakuri, who is described as a member of the Quds force, a special unit of Iran's Revolutionary Guards. He is believed to be based in Iran.

Shakuri allegedly confirms to Arbabsiar that the plot should move forward as quickly as possible, stating: "Just do it quickly, it's late.")

さらには、このアルバブシア被告という米国人が、サウジ大使暗殺を企てたこと自体が捏造ではないかと疑わしく思えます。

9.11米国同時多発テロ事件に関与した(疑いが強い)米国政府ですから、今回程度のシナリオを書くことなど子供だましくらいのものでしょう。


政権の人気がなくなれば、外に敵を作って国民の注意をそらし、一体感を演出して政権の支持率を上げることは米国の政治家の常套手段です。

また、これでイランとサウジアラビアが戦争になって米国がサウジを支援する形になれば、サウジへの武器輸出でどん底の米国経済の立て直しに役立つのかもしれません。

さらには戦争で勝てば、イランの石油利権への米国の支配力を高めることも可能かもしれません。


一方、イラン政府が本当にこのような暗殺を企てたのだとしたら・・・何の目的でしょう?サウジと戦争を起こしたいと考えているためでしょうか?
あるいはこの駐米サウジ大使を消したい理由があるのでしょうか?


そもそも、このサウジ大使、どんな人でしょうか?アデル・アルジュベール(Adel Al-Jubair)という人です。

Wikipediaでは日本語の記事はありませんが、英語の記事にはこんなことが書かれています。

(引用開始)
Ongoing arms sales between the countries are a testament to the longstanding Saudi military partnership with the United States. In 2008, the Kingdom secured sophisticated weapon systems, which include the Joint Direct Attack Munitions.

In October 2010, the Obama Administration notified Congress of a proposed arms sale to Saudi Arabia up to an estimated $60 billion – the largest U.S arms sale in history.[31] The sale is meant to further align the Saudi military relationship with the United States and allow the Kingdom to better protect its security and oil infrastructure, which “is critical to our economic interests,” said Andrew Shapiro, assistant secretary for political and military affairs, at a State Department news conference. The agreement will include the sale of 84 F-15 fighter aircraft, almost 200 helicopters and the upgrading of 70 older-model F-15s.

For both arms transfers, Ambassador Al-Jubeir led an effort which brought together support from industry, labor, Congress and the Administration to ensure that the agreements were approved without objection.
(引用終わり)


訳してみますと(Google翻訳の助けを借りながら…)以下のようです。

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二国間で進行中の武器の販売は、サウジアラビアの米国との長年にわたる軍事協力関係を証明するものです。 サウジは2008年に、統合直接攻撃弾JDAMを含む洗練された兵器システムを確保しました。

2010年10月にオバマ政権は、推定$600億にもなるサウジアラビアへの武器販売の提案を議会に通知しました - これは史上最大の米国の武器販売です。この販売は、米国とのサウジの軍事関係のさらなる提携を意味しており、そして、国務省の記者会見で政治および軍事次官補のアンドリューシャピロが「自分たちの経済的利害に重要である」というセキュリティと石油インフラを、サウジはよりよく保護することができます。契約には、84機の F-15戦闘機、約200機のヘリコプターの販売と70機の旧モデルF- 15のアップグレードが含まれます。

両方の武器移転において、Al- Jubeir大使は、契約が異議なく承認されることを確実にするために産業、労働界、議会および政権からの援助を得る努力を主導しました。

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もし、イラン政府がこの人物の殺害を企てたとすると、サウジの米国から武器購入を防止するためでしょうか?でも、どうせ後継者が来るだけなので、意味ないですね。

一方、サウジ大使が暗殺されかけたと米国政府が捏造した(そしてサウジ大使がそれを信じた)とすると…、サウジ大使に恩を着せてさらに武器を買わせる、イランへの制裁(攻撃?)をそそのかす、などなど米国にとって色々な利益が考えられます。

どうも、米国による捏造の匂いがしてきます。
しかし、そうだとすると、それにしてもチープな設定ですね。古い映画を見るようです。


とにかく、中東在住者としては、(世界平和のためにも個人的な安全のためにも)中東地域に紛争が起らないことを望みます。