中国が新幹線で特許出願!? | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

中国版新幹線。
日本の川崎重工やドイツのシーメンスから技術供与を受けて完成、開業したばかりです。

連日のトラブルや手抜き工事が報道されていますが、同時に、中国が特許を申請していることも問題になっています。これに対し、中国は全て自主開発した技術だと主張しています。

http://www.asahi.com/international/jiji/JJT201107070134.html

(引用開始)
新幹線特許、「すべて自主開発」=日本の水準を超越―中国鉄道省  2011年7月7日21時6分

 【北京時事】中国鉄道省の王勇平・報道官は7日、国営新華社通信などの取材に応じ、中国が進める高速鉄道(中国版新幹線)の特許国際出願について、「すべて中国が自主研究して生み出した技術であって、他国の知的財産権を侵害した事実はない」と弁明した。また「中国人は他人の所有物を自分の物だと強弁することはないし、他人の指図によって、出願の権利を放棄することは絶対にあり得ない」と強調した。

 同報道官は「中国は世界の高速鉄道技術レベルを、時速250キロから350キロに引き上げた」と説明。「これは日本が欧州の技術を借りて時速100キロを、200キロに引き上げたのと同じだ」と指摘した。

 また、「世界の高速鉄道市場は誰にでも開かれ、公平で、いかなる国の利益にも属さない。誰でも競争できる」と述べ、米国など海外市場への進出に意欲を示した。

 同報道官は「とりわけ(国外から技術を本格導入した)2004年以降、中国の技術体系は一連の重大な創造的成果を得て、世界の最先端に入った」と指摘。「中国の多くの技術基準は、日本の新幹線をはるかに上回っている」とした上で、日本の新幹線整備を支援するため「関連技術を提供したい」と語った。 
(引用終わり)


これに対し、技術供与した川崎重工は、提訴の動きも見せています。

http://www.asahi.com/business/update/0704/OSK201107040149.html

(引用開始)
 中国の高速鉄道に技術を提供した川崎重工業の大橋忠晴会長は4日、中国企業による国際的な特許申請の動きについて、「日本から提供した技術に抵触する状態にあれば、提訴しなくてはならない」と述べ、法的措置も視野に入れて検討する考えを明らかにした。

 会頭を務める神戸商工会議所の定例会見で語った。大橋会長は、中国側との契約については、「移転した技術は中国国内の使用に限るということが明確だ」と 説明。その一方で、「(中国側が特許申請する)内容が分からないので、今は対応のしようがない。もう少し冷静に見守ったほうがいい」とも話した。


 中国の高速鉄道は川崎重工をはじめとする日本企業やシーメンスなどドイツの技術を基に開発された。だが、中国側は「独自に発展させた」として、日米欧など5カ国・地域で特許を申請する準備に入った。

(引用終わり)


中国相手ということで、感情的な意見もネット上を賑わしていますが、とりあえず冷静に考えてみましょう。
特許の内容がわからないのですが、場合分けしてみます。

(A) 本当に新規性・進歩性のある独自技術である場合
(B) 供与 した技術に大きく関連する特許を申請している場合
  (B1) 川重が既に取得している特許と内容的に重なっている技術を中国が申請してきた。
  (B2) 川重は特許を取得していたが、中国がその隙間を狙った特許を申請された。
  (B3) 川重は特許を取得していなかった。


 (A)であった場合は、中国の言うとおり、堂々と負けを認めて、本当に素晴らしい技術であれば技術供与を受けることも考えればいいでしょう。

 その場合でも、基本特許を川重がちゃんと取得していて、中国の特許がそれを発展させたものであれば、川重の特許を使用せずにその特許は行使できないことになります。もし中国が本気で海外進出するとしたら、契約次第ですがそれに伴って川重に特許料が支払われることも考えられます。


 (B1)の場合は簡単で、そんな特許は認められないはずですので、静観・無視していればいいことになります。
 ときどき驚くような判定をされることもありますが、その場合は異議申し立てをすることになります。


 (B2)が最もありそうなケースです。特許は他社に権利を奪われないよう、うまく網羅的に書いて申請すべきですが、そこは人間のやることですので、どうしても穴があることもおおいにあります。
 そういう隙間を狙って特許申請してくる会社もあります。

 実際、私の会社でも、ある技術を技術導入したいと言ってきた外国の某社に、守秘契約を結んだ上で技術を開示したところ、当社の特許の隙を突いた特許を申請されたという事件がありました。

 日本人、特に技術者は、仕事相手を仲間とみなしたくなる性向があると思います。そして、お互いの利益のために仲良く協力しようという意識で対応します。

 しかし、したたかな欧米や中国の技術者は、テーブルの上では笑って握手しながら、テーブルの下では足を蹴りあっているなどということができる人たちです。

 本当は日本人のやり方が長い目で見て好ましいと思いますが、それは相手もそう思っている場合に限られます。我々は、したたかな抜け目ない相手と仕事をしていることを、肝に銘じなければならないと思います。

 道義的にいかがなものかと腹は立ちますが、残念ながらこの場合は冷徹なビジネスの世界の目で見ると、自らの側にも落ち度があったことになります。


 もし(B3)であった場合は、川崎重工の大失態です。

 特許も出していないのに、他社、それもよりによって中国に技術を開示するとは、会社の知的財産を守る戦略として最悪です。契約でいくらかは縛っているはずですが、それにしても今さら何を言っても遅いです。

 逆に中国に特許侵害していると訴えられて、先使用権で細々と権利を主張するなんてことになったら、最悪の悲劇です。

 
 特許戦略の大切さを改めて考えさせられる事件です。
 今後の成り行きを注視したいと思います。