NHK 週刊 ニュース深読み「広がる不安“内部被ばく”」 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

海外でJSTVという日本語チャンネルを見ていますが、今日、NHKの番組の、
 「週刊 ニュース深読み『広がる不安“内部被ばく”』」
を放送していました。

解説者として出演してたのは、

 東京大学名誉教授・日本学術会議副会長…唐木英明
 日本赤十字社長崎原爆病院院長・血液内科医…朝長万左男
 琉球大学名誉教授…矢ヶ崎克馬

の各氏でした。

つい先日のブログコメントへの返答で引用したのが、以前に紹介した矢ヶ崎教授。この方は、内部被曝はきわめて危険という立場。
あとの二人は、現在の状況では内部被曝は恐れる必要はないという立場。

矢ヶ崎氏を出演させたことは、NHKの快挙でしょう。
それでも、危険派1人に安全派2人で分が悪い。また、矢ヶ崎氏はしゃべり方がとつとつとしていて、またときにわかりにくい。
この点、一方の唐木氏のしゃべり方は明確です。明快に、現状はもう安全だと強調していました。

しかし、特に唐木氏はもともと御用学者とされており、ネット上では非難ごうごうです。矢ヶ崎氏ガンバレと。
http://togetter.com/li/156622


各氏の特徴的な意見を挙げると、こんなところかと。

・矢ヶ崎氏:
 - 外部被曝はガンマ線による被曝だが、内部被曝では放射線源が細胞の近くにあるため、アルファ線、ベータ線による被曝も起きる。DNAが同時に多く傷つくため、修復が難しく、同じ放射線量でも600倍危険と考えるべき。
- 日本がよりどころとしているICRP(国際放射線防護委員会)は、原発推進派の集まり。欧州のECRRは、内部被曝がより危険との判断を示している。

・朝長氏:
 - 自然界でも放射性カリウムから内部被曝しており、現状はそれよりも小さい。
 - 100mSv以下でガンの発生が増えたという確かな疫学的データはない。
 - これから出てくるデータが大事。(←福島の人を人体実験と見ていることを吐露してしまった?)

・唐木氏:
 - 肥満や喫煙と被曝のリスクを比較して、問題ないレベル。100mSvなら受動喫煙以下の危険レベル。
- 東京と福島では大きく違う。東京は大丈夫。福島は政府がやらなければならない。
  (←たいていの人は、今後何もなければ東京はさすがに大丈夫と思っている。福島の人たちを心配しているのに・・・。)
  
・NHKから
 - ICRPが食品から摂取してよいとしている基準値は1ミリシーベルト。日本は今回の事故を受けて、これを「緊急時」として、20ミリシーベルトまで緩和している。
- 学校給食の食材が心配で、自分の子どもに弁当を持たせている母親を紹介。


さて、議論のポイントですが・・・。

100ミリシーベルト以上では、発がんの危険性は被曝量に比例することについては、意見は一致しているようです。一方で100ミリシーベルト以下の領域のカーブについては、説がいろいろあると。

原点とそのまま直線で結ばれるという説(ICRPはこの説)、S字で被曝量が小さい場合はリスクが比例よりも小さくなるという説、逆に逆S字型で比例よりもリスクが高くなるという説(多分、ECRR)。

この図は唐木氏が出したものですが、カーブは3つだけで、しきい値のあるカーブ、すなわち、「これ以下の被曝量では発がんのリスクはゼロ」というカーブはありませんでした。

(WIkipediaによると、放射線影響協会、電気事業連合会、文部科学省は、しきい値がある説を取っているそうです。それぞれ、年間5ミリシーベルト、100ミリシーベルト、恐ろしいことに文部科学省は200ミリシーベルトだと。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E6%9B%9D


私から見ると、カーブの形がどうであれ、被曝量が上がるほど発がんのリスクは高くなることは一致しているのであれば、さほど大きな意見の違いでもないのでは、と思うのですが。

もし被曝がなければ1000人のうち何人がガンになるのか、それに対して、例えば20ミリシーベルトの被曝をした場合には、ガンになる人が何人増えるのか、という問題。こういうデータを人間で実験して取るわけに行かないので、実際のデータは広島・長崎とチェルノブイリの統計データだけです。

朝長氏は、今までそのような統計的結果は確認されていない、確認できるほどの差は認められていないと言っているのであり、(とは言え、しきい値モデルではない図に反論しなかったので、リスクが上がるであろうことは認めている)、矢ヶ崎氏はデータがなくても、発がんリスクが高くなるのだから、絶対に内部被曝を避けるべきだ、と言っています。

結局は、どちらも、100ミリシーベール以下の被曝によっても、わずかながらガンになる人が自然にガンになる人よりも少し増えるだろう、という見解では一致しています。


以下、個人の見解です。

確率が高くなるといわれても、ある人にとってはガンになるかならないかのどちらかなんですよね。

その高くなるリスクをわずかでも絶対に許容すべきでないと思うか、それよりも「ある程度であれば」現実の生活の方を重視するかという選択になろうかと考えます。

問題は「ある程度」がどのレベルなのか、です。
今回のNHKの議論では定性的な話に終始し、定量的な話が出ませんでした。

Wikipediaの記述(ICRPの仮説)から計算してみると、、
  100ミリシーベルト被曝すると、200人に一人がガンになる。
  20ミリシーベルト被曝すると、1000人に一人がガンになる。
ということになります。
 (ただし、ECRRはこの計算よりもリスクが高くなるとの説です。)

 (これが正しいとして、)これを恐ろしいと見るか、仕事・生活・財産を放り出して逃げるほどのリスクではないと見るか。また、少しでもリスクを減らすために苦労・不便・費用をいとわないか、この程度ならもうあきらめてもいいやと思うか。個人個人によって捉え方は異なることでしょう。


私の意見をまとめると、以下のようです。

・まず、こんな被曝は本来、福島第一原発の事故がなければ誰も受ける必要のないものだった。
 東京電力および原子力発電を推進してきた政府および前政権の自民党は、被害者の救済・補償に全力で対処しなければならない。官僚の責任もきわめて重い。

・一方、不幸にして汚染された地域に住んでいる人にとっては、正しい知識で正しく怖れることが大切。
 もちろん、被曝はゼロが好ましいのは間違いないが、現実問題としてそこで仕事をし、生活をしている人が、本当に仕事も生活も財産も放り出して急いで逃げ出すべきものなのか、あるいは日常生活で何か気をつけることはあるのか、それとも健康への影響はそこまでして怖れるほどのものではないのか。信頼できる情報を提供すべき。
 唐木氏のように、全く問題ない、安全だなどと言われると、信じる気持ちになりません。


 どのくらい発がん・その他のリスクがどのくらい上がるのかの情報(学者により意見が異なって合意を見ないのだから、両論併記でわかりやすくするしかない)と、個人による行動の判断の助けとなるガイドラインを示すこと。
 そして、いずれの判断をしたとしても、その支援を東電・政府がしっかり行うべきと考えます。