福島第一原発 地に落ちた安全神話(すばらしいReuters記事) | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

福島第一原発の事故に関して、Reutersが「地に落ちた安全神話-福島原発危機はなぜ起きたか」という長文の記事を出しています。


今回の事故が起き、さらにこれほどまで大きくなってしまった背景を、広い視野から厳しく指摘しており、「よくぞ書いてくれた」という気がします。

個人的には、あと、御用学者・メーカーを含めた原子力村の問題、また大手マスコミの対応の問題について抜けてるように思いますが。


http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPJAPAN-20331820110330


以下、要約というか(ほぼ)抜粋です。

それでもこんなに長いです。

今回は読みやすいように、イタリックにはしていません。



<埋もれた4年前のリポート、福島原発モデルに巨大津波を分析> 

 東京電力の原発専門家チームが、同社の福島原発施設をモデルにして日本における津波発生と原発への影響を分析、2007年7月、米フロリダ州マイアミの国際会議で発表していた。

 13メートル以上の大津波は0.1パーセントかそれ以下の確率で起こりうる。

 そして、高さ15メートルを超す大津波が発生する可能性も示唆。

 リポートでは「津波の高さが設計の想定を超える可能性が依然としてありうる」と指摘している。 


 一方で、東電の公式見解では、今回の大震災の発生を「想定外」としてきた。


<従来の事故想定は機能せず>  

 社内に危機管理のノウハウを持つはずの東電が、外部の専門家に救いを求める。それは従来の事故想定が機能しない段階まで事態が悪化していることを物語っていた。

 「危機対応も含めて安全管理のプロがそろっていたら、こんな状態にならなかったはずだ」。 


<遅れる判断、海水注入> 

 事故発生後の失策の一つは、1号機に対する海水注入の決断の遅れだ、と複数の専門家は見る。

 海水注入の遅れが水素爆発を誘発し、それが現場の放射線環境の悪化を招く。作業員の活動は困難になり、対応がさらに後手に回る。初動を誤り、スパイラル的に状況が悪化していく悪循環の中で、福島原発は大惨事に発展した。

 武藤副社長は「想定外の津波が起こった。今回は最大限の努力を払った」と繰り返す。 


<政府もコントロール機能が欠如>

 政府にさえ、緊急時対応をコントロールする機能が欠如していた。原子力災害特別措置法で、原子炉に大きな問題が生じた場合、政府が電力会社に必要な指示を出すことができると規定している。

 「政府は海水注入の判断を東京電力に任せず、政府の責任でやらせるべきだった」

 福島原発の設備を新たに作り直すとすれば、費用は1兆円程度になるという。東電の経営にとっては重大な決断だが、「すでに事態は個別企業の問題という枠を超え、国や社会に対して大きな危険が及ぶ状況に変わっていた。原災法に基づいて、政府が海水注入の意思決定を行い、早く指示を出すべきだった」


<問われる原子力安全・保安院の対応力> 

 政府の事故対応と状況の分析については、経産省原子力安全・保安院が最前線の責任を担っている。約800人で組織され、原発の安全審査や定期検査、防災対策などを担う。
だが、今回の事故は、その役割と遂行機能についても疑問を投げかけた。

 今回の事故では、地震発生時に集まった同院検査官は15日には現場を離脱し、1週間後に舞い戻るなど、その対応のあいまいさが指摘される場面もあった。

 民間の原子力専門家の中には「原子炉運転の仕組みなどは、保安院の検査官は電力会社に教えてもらうこともしばしば。検査と言っても、形だけのチェックをしているにすぎない」などの厳しい指摘も少なくない。 


<安全基準への過信、リスクを軽視>

 IAEAは昨年、「世界への警鐘」として、2007年の新潟県中越沖地震についての報告書を発表。そのなかで、同地震の例を引きながら、「最大の脅威は原発の壁の外にあるだろう」として、地震や津波、火山噴火、洪水などの激烈な自然災害の発生を想定し、一段と備えを強化するよう求めた。

 その警告は、今回の福島原発の惨事において、どこまで生かされたのか。放射線被ばくの危険にさらされながら決死の注水や電源回復などにあたる現場の作業員の行動については、国内のみならず海外からも称賛の声が届いている。しかし、翻せば、それは危機への備えが十分にされていなかった日本の現実、と海外の目には映る。


<もたれ合う政府と業界、金融危機の構図と二重写し>

 原発推進という利害のもとで、密接な関係を築いてきた経産省・保安院と電力会社。ともに原発の危険シナリオを厭(いと)い、「安全神話」に共存する形で、その関係は続いてきた。だが、監督官庁と業界の密接な関係は、ともすれば緊張感なき「もたれ合い」となり、相互のチェック機能は失われていく。その構図は1990年代の「金融危機」と二重写しのようでもある。

 国策として原子力推進を進める経済産業省に、安全規制を担う保安院が設けられている現状では、強力なチェック機能は期待しにくい。保安院が「原発推進のお墨付き与えるだけの機関」(電力アナリスト)と言われる理由はここにある。


<競争原理働かぬ電力会社、ガバナンスの不在招く>

 民間企業でありながら、地域独占を許されて電力供給を担う東電。特権的ともいえる同社のビジネス環境が、同社のガバナンス確立を遅らせる要因になってきた、との指摘は根強い。

 東京電力に緊急融資2兆円―。大手7行が今月中に巨額融資を実行するニュースは、市場関係者も驚かせた。

 「3月中に実行してほしい。おたくは上限いくらまで出せますか」、しかも、当初提示してきた条件は格安で経営危機に直面するリスクの高い借り手には、とても許されない好条件(大手行幹部)。「さすが殿様会社。自分の置かれている状況がどんなに悪化しているのか分かっていないようだ」

 全国9電力体制の下、料金自由化も進まない電力市場では、業界各社間の競争原理が働かず、「経営規律を厳しくして企業体質を強める」という普通の民間企業なら当たり前の課題も放置されがちだ。


<エネルギー政策の構造改革に口火も> 

 政府の中には今回の事故をきっかけに、抜本的なエネルギー政策の見直しに取り組むべきとの声も出始めた。

 最大の課題は、原発の安全神話が崩れた今、今後の日本の電力エネルギーをどのように確保するのかという点だ。日本の電力供給に占める原発の割合はすでに約3割に達している。その一方で東電の供給力不足解消の見通しは立っていない。


 このままの状態が続けば、企業の生産回復を阻害する構造的な要因になり続ける可能性もある。「資源エネルギー庁と東電は法律に違反しない範囲でどのように計画停電を行うかに、すべての力を注ぎこんでしまっている」(政府関係者)。 


 もう一つの焦点は電力自由化だ。国策である原発推進を二人三脚で進めてきた電力会社と経産省だが、電力自由化では対立を続けてきた。2000年初頭に経産省が水面下で進めようとしていた発電と送電を分離する抜本的な自由化案は、東電を中心とした電力会社の抵抗に会い、あえなくお蔵入りとなっている。