1981年のスワンソング/幻冬舎

 

現代からいきなり1981年にタイムスリップしてしまった男性の話。
そのタイムスリップの仕方も理由のなさもあまりに唐突で、かわいそうになっちゃいましたが!
主人公もその唐突さに途方にくれるものの、住むところもないし仕事をしたくても住所も書けない、保証人になってくれる人もいない…という過酷な状況から少しずつ抜け出していく様子は単純に「がんばれー!!」と応援したくなりましたね。
そして公園での路上生活する中で、1981年以降に発売された名曲、ヒット曲をバンドとして歌ったところ、レコード会社の人から目をつけられてゴーストライターになっていく辺りから、「それ、まずいんじゃないの?! だってあの名曲だよ!」と、なんとも落着けない状況になりました。
いや~~、いつ現代に戻れるか分からないし生活もできないような状況で、著作権もなにも気にすることなんかできないよ と言われればそれまでですが、やっぱりそれはまずいよ! と思いつつ、あの名曲なら1981年でもヒットするかな、いや、あの時代にあの人が歌ったからヒットしたんだよな とか思いを馳せることができて楽しい作品でした。
音楽関係の人が読んだら確実に怒りそうな内容ですが…(笑)

また同時に1981年ってこんなにも現代と違ったのかな と、感じました。
セキュリティーの甘さとか、携帯電話がない状況とか、レコードで音を出す環境とか音楽をレコーディングする時の環境とか、バブル前夜な雰囲気とか…。
たった三十数年で、日本ってこんなに変わったんですね。
いい変化もあれば昔の方がよかったかもっていう変化もあるのが面白いなと思いました。