真実への盗聴/講談社


 

この本、タイトルがタイトルなので、外で読むのははばかられましたが…
最初からグググッとひきつけられるものがあり、一気に読めました。
病気の治療のため、人の遺伝子を組み換える手術を受けたヒロインなのですが、その後遺症なのか、耳が信じられないほどよくなってしまいます。
一方、とある製薬会社で寿命を数十年伸ばせる遺伝子組み換え法というのが開発され販売間近という設定なのですが、販売開始をどうにか阻止しようとする子会社にヒロインは潜入し(要するにスパイ)、持ち前の異常なほど研ぎ澄まされた聴力で盗聴して真実を知っていく…という話でした。
ヒロインの聴力はどうしてそんなによくなってしまったのか?という謎も後半に解明されます。

このストーリーの核には年金制度崩壊という設定があります。
高齢者がどんどん増えていく中で、それを支える若い世代は自分がもらえるかどうか分からない年金のためにお金を徴収され続け、そのために自分たちの給料だけでは生活できずに年金受給者から援助してもらっているというおかしな世の中になっちゃっているのです。
その上に寿命を延ばすことができるようになってしまうと、高齢者がますます増えるわけで、年金制度は完全に崩壊するではないか?!という問題が根底にあるストーリーでした。
ありそうな話で「なるほどー」と思うことがたくさんありました。

ヒロインの聴力のおかげでどんどん新しいことが分かっていくのですが、特別びっくりするような展開ではなかったのが少し残念でした。
いや、十分びっくりするような展開だったのだと思いますが、設定自体がびっくりだったので、そちらに気を取られた感じかな。

しかしこのスピード感、怪しげな人物がどんどん登場する感じはたまりませんね~!
朱野帰子という著者の他の作品も読んでみようと思いました。