心/集英社


星星星星星


学生が他大学の先生に相談の手紙を渡すことから物語は始まります。
そして学生は「死とはどういうものなのか」「人は皆いずれ死んでしまうのに、なぜ生きるのか」という疑問に、いろいろな経験と先生との文通を通して考えていくストーリーでした。

まず、私自身が高校生の頃など、手紙で友だちとディープなネタを交換したよなぁ…と思い出しました。
こうして手紙に(この作品の中では主にメールですか)「書く」ことで、自分の気持ちを見つめなおしたり考えたり整理したりできるものだよなぁと思います。
学生のうちに、こんなに親切に返事をくれる「師」に出会えた主人公は、非常に幸せ者だなと感じました。

しかし、彼の経験したことは過酷ですね。
友人の突然の病死。
そして別の友人の両親が震災の津波で亡くなり、それがきっかけで海の中の遺体捜索のボランティアに参加します。
あまりに短期間に「死」について考える出来事が起こりすぎだよなぁ。
過酷すぎるよなぁ。


ラストでは非常に忙しい様子の先生が、なぜこんなにまでも一人の学生のことを気にかけ、丁寧に返事を書いていたのかが分かります。
切ない話ですね。
でも「死」について、いろいろと考えさせられました。

ゲーテの「親和力」は読んだことがありませんし、おそらく今後も読むチャンスはないと思いますが、そんな難しい話を現代版に展開して劇にしちゃった萌子という女性の存在感が強かったですね。