ガソリン生活/朝日新聞出版



星星星星


ガソリン生活? いったいどんな話なんだ?と思って読み始めて驚きました。
語り手が「車」なんです。
それも、個人が所有している、いわゆるマイカーが自分の持ち主のことを観察したり心配したりして、何やら事件に巻き込まれているのを見ているという設定です。
隣の家の車や、駐車場で隣にとまった車、また行きかう車との会話が面白い!
人間ならこんな風に表現するけれど、車なら別のいい方になるんだなとか、そういう細かいネタ的なものが面白い!
そして、事件のことについて知りたいのに、主人が車から離れたところで話をしてしまうと、車は主人が何を話したのかが分からないのがもどかしいです。あっちであんな危険なことが起こりそうだと車はわかっていても、自分だけでは動けないのももどかしい。
しかし車同士の噂話で全容が見えてきたり、ちょうどいいタイミングで主人が愛車を動かしたり目的地に行ったりするのがワクワクしますね~。

ツボだったのは、なぜか車は自転車の言葉がチンプンカンプンであること!
自転車に話しかけるも、返ってくる言葉は「§ΔΘΞ!」とか、意味の分からない記号であらわされていて、そのあとに「いや~、やっぱり自転車の言っている言葉はさっぱりわからない」とか書いてあるとおかしくておかしくて。

久しぶりに伊坂幸太郎さんらしい、テンポのいい作品に巡り合えてうれしかったです。
あと、いつもある過去の作品の登場人物がさりげなく登場している場面がいくつか発見できて楽しかったです。(「オー、ファーザー」の4人父親がいる男の子とか…)