影法師 (講談社文庫)/講談社



星星星星星

二人の武士の生きざまと友情を描いた作品。
まず、武士の世界ではどんな家柄に生まれたかと、何番目に生まれたかによってほとんどの運命が決まってしまうものなのだなと知りました。
その中でも、努力したものは何らかの形で報われる場合もあるわけなのですが、本作ではいろいろなきっかけを通して努力が報われて上に上がっていく勘一と、ある事件をきっかけに才能は十分にあるのに上に上がれずに一生を終える彦四郎が、どういう関係であったのかが描かれていました。

彦四郎の勘一に対する行動を知るにつれて、こういう生き方もあるものなんだなと心が震え、涙があふれました。
彦四郎は亡くなる前に勘一の一生の成果ともいえる新田を眺め、自分の人生は間違いなかったと感じられたと信じたいです。
自分が友の「影」として一生を送ろうと決め、それを実行した彦四郎の強さに驚きました。その生き方を選んだもう一つの理由として「みねを守る」と約束したという思いもあることを知り、自分を犠牲にして人を幸せにしようとする生き方ってすごいなと感じました。

武士の世界は、現代の私たちを取り巻く環境とはあまりに異なります。
切腹なんて、しなくてもいいのに!と、心の底では思う一方で、命をかけて守ろうとするものがあるという、一本筋の通った武士たちの生きざまは、かっこいいなと感じました。