およそ30年前の2月2日、トムは父と私立中学の合格発表に向かっていた。
トムが親に『この学校にいきたいから、受験したい』とお願いして、2月1日に受験した本命校。
当時は今のようなインターネットでの合格発表も無かったから、学校で掲示される発表を見に行かねばならなかった。
合格発表の場は、人で溢れていた。
倍率もそこそこ高く、合格していた番号の最初が『11』番くらいで、
『おいおい、1番から10番まで落ちてるってことじゃん!』とビクビクしていた。
『あった!』
トムは自分の番号を見つけ、思わず言った。
その瞬間、父の拳が飛んできた。
意味がわからず唖然とするトムに父は言った。
『周りには落ちた人もいる。あとで喜べ。』
トムが親になり、子供の入試も経験した今ならわかる。
30年前、本当に喜んでいたのはトムよりも父だったのだ。
父は『しつけ』を優先したのだ。
そういえばオヤジ、派手なガッツポーズするプロ野球選手のこと嫌ってたな。
と、帰宅する電車でトムは思ったことを覚えている。
トムにとってそれが父だった。
戦争を経験し、笑ってしまうくらいしつけが厳しい昭和のオヤジ。
その父が先日他界した。
色々な感情が出てくる。
無償の愛情を注いでくれたことへの感謝。
何も親孝行してやれなかったという後悔。
苦しい時に助けてやれなかった懺悔。
最後の入院から約2週間で、父の具合は日に日に悪化した。
入院当初はマトモに話をしていたのが、徐々にろれつが回らなくなり、意味不明なことを言い出した。
深夜や早朝にもトムに電話してきて、『助けてくれ』と泣きつかれた。
『俺はお前を頼りにしているんだ』
そんなことを父の口から聞いたのは初めてだったから、父がせん妄状態だとは分かっていても助けてやりたかった。
オヤジ、ごめんな。
俺はちゃんと、周りの人の気持ちも考えられる人間になるよ。
納骨の日、住職がこんな話をしてくれた。
『親を亡くして親を知り、親を亡くして親に出会う』
今からでも遅くはない。
いや、今すぐにだ!
親孝行して下さい!
いや、すぐにしろ!
連休中の人は、お墓参りに行きましょうね。
合掌
