トムは、電車に乗らない。


好きではないからだ。


その為、Suicaも持ったことが無い。


メロンは好きだが。 ←オヤジギャグ


だが年に数回、しょうがなく電車に乗ることがある。


車内の風景が珍しく、ついキョロキョロしてしまう。

「乗客全員スマホ見てて、キモ!」と思った時期もあったが、今はもう何とも思わない。


トムが先週訪れた大阪で、電車に乗って感じたことだ。

電車でスマホを見ている人が、東京に比べて少ない。

間違いない。


誰かと話しているか、何かを読んでいるか、中吊りや景色を見ている人が多いようだ。


トムが思うに、東京の人はスマホや睡眠に没頭することで周囲をシャットアウトしている。


大阪の人は、シャットアウトしていないように見えた。


トムはSuicaが無いから切符を買うのだが、最新の券売機の使い方が分からない。

いつもそこで時間を食ってしまうのだ。


研修に行った大阪の、「下新庄」駅で事件は起きた。


そこは東京で言う、下町のような辺りだ。


新大阪までの切符を買おうと券売機に並んでいたトムに、前にいたオッチャンが話しかけてきた。


「兄さん、すまんが切符を買うてくれんか」

「ニッポンバシまでなんやけどな…」


奇跡である。


オッチャンの相手は、めったに電車に乗らない東京の人間である。


だがトムもペーペーとはいえ、空手道場生の端くれなのだ。

(道場に貼ってあるのだ)


「良いですよ!えーっと、ニッポンバシ?ですね…」


どこだどこだと券売機の上の路線図を眺める。



わからんショボーン



すると、すぐ横にいた学生さんが大きな声で指さして「ニッポンバシここー」と、教えてくれた。

また別の通りがかりの人が、「乗り換え大変や」とボソッとつぶやく。


「あ、どうも!420円だから、このボタンを押してと…」


「おおきに!」


あっという間に知らぬ人に話しかけられ、それを横からまた知らぬ人が手伝ってくれる。


これは東京には無い。


大阪のパワーや!



こりゃあ、大阪の人に会話でかなうわけないな。

と、トムは痛感したのだった。