トムの休日は、充実である。


朝から空手の親子クラスに出た後は、橫浜へ。


目的は、写真展である。


体も、頭も、目も刺激するのだ。

(患者さんの小林さんが、橫浜で写真展を開いているのだ)


場所は橫浜の「関内」駅近く、フォトバー🍸なのだ。




さすがのトムも、「フォトバー」なるもの初体験である。

だが、初体験とバレてはトムの名がすたる。

写真をこよなく愛する雰囲気を作り、ドアを開けた。


優しそうな女性が一人、カウンターで出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。すみません、ワンドリンク制なんです」


写真展でワンドリンク制?


「ですよね」


トムはクールに振る舞った。

たまたま表を通りがかったら、気になる写真があったから寄ってみた風を演じたのだ。


フォトバーですからね。


「バーボンで」


とシブくいきたい所だが、トムは車だったのでウーロン茶でこらえた。

カウンターに座ったものの、店内には二人きりで無言の状態が続く。

ウーロン茶も5秒くらいで飲み干してしまった。 



「さてと」


トムはおもむろに立ち上がり、お目当ての写真を見るか。という風に歩いた。

(写真展では、全体の写真を撮ることはOKだが個別の作品を撮ることはNGらしい)
(素敵な写真だらけだ)


もちろん、玄人は写真を見る時もおとなしくは見ない(推測)。


写真を見ながら、


「ん?」と、指をアゴに当て眉間にシワを寄せてみたり。

「遠目から見てみる」風に上半身をのけぞってみたり。

校長先生のように手を後で組んで、店内を歩いてみたり。


だがその間、約2分間。

「もう、もたないな」

「写真のド素人って言っちゃおうかな」

「でも、もしかしたらカウンターの女性も写真は素人だったりして」

そんなことを考えていた。


だがトムの仕事は、毎日何十人も相手にコミュニケーションを取る仕事だ。

静寂を打ち破れ!


「品がありますね」


トムは仕掛けた。


「うん、躍動感もある」


「… (沈黙)」


「写真、されるんですか?」


「ええ、まあ。あ、昔ですけどね。」


嘘はついていない。

昔よく、「写ルンです」で撮っていた。



「そういえば、この辺りの街並みは良いですね」


もう、話を切り替えるのだ。


この辺りの話を約3分。


「ごちそう様でした、美味しかったです」


トムはそそくさとフォトバーを出た。


入店して、約5分間であった。


やはり人間、後ろめたいことがあるとよくしゃべる。


妙な緊張から解き放たれたトムは、せっかくだからと「この辺り」である「伊勢佐木町」を徘徊し、カレーパンを買い食いしてユニクロへ寄った(地元で行けという話)。

花粉を吸いまくった挙げ句、セブンイレブンでアイスとコーヒーまで買ってしまった(セブンは日本中にあるわ)。


そして、渋滞に巻き込まれながら帰宅したのである。

(鬼の環八渋滞)


本日の教訓。

「わからないことは、いきがらず素直に教われ!」