トムは昔、整骨院で修行しながら夜間に専門学校に通っていた。
時間が無かったので移動は主に、バイクだった。
ある時、バイクでこけて自損事故をした。
幸い誰も巻き込まず、トムのケガも大したことなく済んだがバイクが廃車になった。
トムは中古のバイクを探して店をまわっていた。
「いやー、通勤ぐらいしか使わないんで中古の安いバイクないっすかー?」
20年近く昔だが、今でも覚えている。
あるバイク店店長のひと言。
「お客さん、違いますよ。毎日乗るものだから、ちゃんとしたものを乗りましょう」
トムは、ラグビー部の先輩が言っていたことを思い出した。
「良い道具を使っていれば誰でも上手になる訳ではないが、良いプレーヤーは必ず良い道具を使っている」
トムの整骨院での話。
トムは今では偉そうに言っている。
毎日の通勤だから、良い靴を履きなさい。
自分の白衣にアイロンをかけ、キレイに着こなしなさい。
ズボンやシューズは良いものを使いなさい。
いつでも皆は、患者さんに見られているのだ。
口うるさく言っているから、みんな通勤の時にキレイな靴を履いてくるようになった。
白衣をキレイに着こなしている。
キレイな靴下、シューズを履いている。
身だしなみとしても大切だが、仕事への心構えが出来てきたぞと嬉しい。
うるさく言っている甲斐がある。
さ、皆にまた新しい白衣を買うぞ!
白衣のサイドの紺色を効かせ、スリムに見せようという魂胆である。