早朝、寝ぼけた耳に言い争う声が聞こえてきた。しばらく無かったがまた始まったようだ。認知症の母親の泥棒騒ぎである。


 キッチンで新聞を読んでいるかみさんに

   私    『どうしたの』

 かみさん  『お母さんが、買った下着が無くなった返してくださいって、

         盗ったのはあなたしか考えられないって』

   私    『昨日、タンス開けたり押入れで何かやっていたけど、自分で

         何処かにしまって忘れたんだろう、病気なんだから・・・・』

 かみさん  『あなたは、それでおしまいでしょうけど、言われるほうの

         身にもなってください。毎回、毎回、盗った盗ったって

         部屋には入らないことにしたと、何度も言っているんだから』

   私    『申し訳ないね、ごめんね』

                        謝るしかない

 

         しばらく前から、かみさんは母親の部屋には入っていません。

         洗濯物も、廊下から戸をあけてそこに置くだけです。

         ヘルパーさんに部屋の片付けはしてもらっています。 

 

 部屋に行くと、母は仏壇のロウソクに火をつけて、力なく座っていた。

   私    『どうしたの』

   母    『何がなんだか分からなくなった、頭がおかしくなったみたい』

   私    『下着見つかったの・・・・・』

   母    『無いんだけど、ここに置いたんだよ』

   私    『もう少しでディサービスの車が来るから、準備は・・・・・・・』


 ディサービスの人が玄関に迎えに来た。母親が玄関の脇においてある、洗った雑巾を入れてあるビニール袋をかき回し始める。

   私    『何やってるの』

   母    『バスタオルがなくなったので、この中に入っていないかと思って』

   私    『・・・・・・・・・・・・・・・・・、雑巾だよ。あるわけ無いでしょ』

   母    『でも、新しいバスタオルがなくなったから、』

       施設の人に、バトンタッチしてディサービスに出かけてもらった。


 施設の人には申し訳ないが、母親が出かけるとこちらはホットする。

 母の部屋に戻って、仏壇のロウソクを消す。

 ちょっと弱い地震が来た十勝沖が震源地らしい。