母親が少し変だと気がついてから、もう少しで1年になる。

 最初は、鍋を焦がして部屋中を焦げ臭くしたり、テレビやビデオのリモコンの操作
が分らなくなって何度も聞きに来たりしていたが、87歳と高齢なので歳相応の物忘
れと思っていた。

 去年の8月に腰が痛くて動けなくなり、最初はかかりつけの病院に入院しその後
少し大き目の病院に転院した。この時に、貯金通帳から勝手にお金を下ろされて
いると騒ぎ、普段来もしない姉や姉の旦那が私たちを泥棒扱いし始めた。

 姉たちは、母親の古い通帳に線を引きこれが勝手に下ろされた金額だと
十年近くさかのぼって丁寧に合計金額までだして母親に渡した。母がそれを
私に見せてこれが盗られたお金だと真顔で言い、この時に初めて普通の
ボケでは無いと気がついた。

 それまで、母親の通帳はどこにあるのかも知らないし、本人も見せた
ことも無かった。一緒に住んでいても、母親のお金にはノータッチだった。

 写真が見たいというので持っていった。母は、自分が昔綺麗だった
と言われたことが自慢で、いつも写真を大事に持って歩いていた。その時も
周りの人に見せていたそうだが、次に行った時には写真を自分で細かく破いて
ゴミ箱に捨てていた。

 もう、これはおかしいと思い認知症専門の病院に連れて行き、診断された。
アルツハイマーということだった。

 内科と泌尿器科と認知症の薬を飲みながらの在宅生活が始まった。
最初は、ヘルパーさんがお金を盗ったと来るたびに言い、私のかみさん
にも電話や手紙を止めて意地悪をしているなぞと言う。盗った盗られたという
ことが毎日続き、その対応でこちらが参ってしまうほどだった。

 アリセプト(認知症の薬)のおかげだと思うが、今はそういうことも無くなった。
『ただ、此処に置いた物がなくなっている。不思議だ』という言い方になっている。
盗られた盗られたと騒がれるより精神的に大分楽だ。

 見た目は静かな年寄りといった感じで、部屋でテレビを見ているか寝ている。
行きたくないとちょっと文句を言うが、前日から準備をし季節が変わったので
服をとっかえひっかえして、ディサービスやショートスティーにも行っている。

 たまにだが、ディサービスに行く日が分らなくなることがある。そんなのは、
普通に年を取って物忘れする範疇のことだろうと思える今日この頃です。

 母親に関しては、此処しばらく平和が続いています。