半そで姿は初めて見ました。おじいさんの腕にはハート型の刺青があり中には名前らしいものが彫ってありました。


 知り合って2年くらいになりますが、今日はじめて知りました。


   私   『あれーっ、刺青してたの』

 おじいさん『むかしな、自分で彫ったんだよ』

   私   『えっ、どうやって』

 おじいさん『針に糸巻いて少しだけ針先出して、手に墨塗って、上から針で刺す

        と血が出るけど、墨もしみて入っていくんだ』

   私   『ハート型で中に名前が入っているみたいだけど彼女の名前?』

 おじいさん『そんな良い話ではない・・・・・・・  』


  と、おじいさんが話し始めました。


 おじいさんはの生れたところは岬のある海岸で、戦争当時アメリカの潜水艦に

攻撃された船が、家の前の海には何隻も沈んでいるということでした。そうすると

海岸に死体があがる。余り詳しくは話してくれませんでしたが、知人でも本人と

見分けがつかない状態になっているそうです。いつ、自分もそうなるかも知れない

、それで目印になるように目立つ場所に刺青をした。ということでした。


 まずいことを聞いてしまったのかなと一瞬思った。が、待てよ何回も話を聞いて

いるが海の話は一度も無かった。建設現場で仕事をした話や出稼ぎの苦労話は

よく聞いたが・・・・・それに戦時中にハートに名前なんて・・・・・


  私   『もっともらしい事言って、戦時中にハートなんておかしいでしょ』

        おじいさんは、にやっと笑って

 おじいさん『長年生きてくれば、色々あるから、ま、そういうことで』

        と、話をはぐらかされてしまった。


 本当か嘘かは分らないけれど、かなりの痛み抑えて彫った思いの証は、何十年

かたったいまも、おじいさんの腕に生きている。