
本格的な受験シーズンの中で行われる今回の衆議院選挙。選挙期間中に入試を行う主要な私立大学17校のうち半数を超える10の大学が、試験会場周辺での街頭演説による影響を懸念し、候補者や選挙管理委員会に配慮を要請していることがNHKのまとめで分かりました。総務省によりますと、2月の衆議院選挙は、36年前の1990年以来で、こうした要請が相次ぐのは異例だということです。
また、総務省は1月30日に、全国の選挙管理委員会に対し、静かな環境を確保するため、学校からの要請に応じて候補者や政党に周知を行うなど、適切に対応するよう求める事務連絡を出しました。
NHKは学生数がおよそ2万人以上で、選挙期間中に入試を行う全国の私立大学17校に影響や対応を取材しました。
その結果、日本大学や東海大学、関西大学、同志社大学などあわせて10の大学が街頭演説による影響が懸念されるとして、候補者や選挙管理委員会に配慮を要請していることがわかりました。
具体的には日本大学は「試験会場周辺では静かな環境を保って欲しい」と選挙管理委員会に文書で要請したほか、大阪の関西大学は直接、候補者に試験日や会場を連絡して配慮を求めたということです。
法政大学や専修大学は街頭演説が始まった場合、試験を一時中断して時間を繰り下げることもあるとしています。
中学受験もピーク 「特段の配慮」を求める
2月は首都圏を中心に中学受験がピークを迎え、東京私立中学高等学校協会は、選挙期間中に都内181校が入試を行うとして、選挙管理委員会に対して「特段の配慮」を求めています。
文部科学省は「受験生が集中して試験に臨めるように留意して選挙運動を行ってほしい」としています。
総務省 全国の選挙管理委員会に適切な対応求める
また、総務省は1月30日に、全国の選挙管理委員会に対し、静かな環境を確保するため、学校からの要請に応じて候補者や政党に周知を行うなど、適切に対応するよう求める事務連絡を出しました。
《大学側の対応は》
「耳栓」の使用 特例で認める大学も

街頭演説の影響を懸念し、通常は禁止している「耳栓」を特例として認めた大学もあります。
東京・国分寺市にある東京経済大学では来月3日から9日にかけて一般入試を行い、特に7日には大学のキャンパスに加えて全国8か所に試験会場を設置します。
しかし、いずれの会場も主要な駅の近くに位置していて、街頭演説などの影響が懸念されるため、大学は、受験生の試験中の耳栓の使用を認めたということです。
試験中の耳栓は不正行為の疑いや監督者の指示が伝わらないなどの理由で、大学入学共通テストをはじめ、通常、ほとんどの入試で禁止されています。
東京経済大学も今回に限った特例としていて、イヤホンのような電子機器は認めず、試験前に監督者が現物を確認することにしています。
東京経済大学の橋本博一入試課長は「受験生にとって大事な入学試験で力を最大限発揮してもらうため認めることを決めた。できるだけ集中して受験ができる環境を整えたい」と話しています。
試験会場の一部を急きょ別の建物に

東京・千代田区にある上智大学は来月6日から11日の日程で入試を実施する予定で衆議院選挙の期間と重なります。
加えて試験会場の四谷キャンパスが駅前にあって大通りに面しているため、街頭演説などによる影響を懸念し会場の一部をキャンパス内の別の建物に変更することを急きょ決めました。
具体的には500人余りが受験する会場を道路に面した建物の9つの教室から別の建物の教室に変更し、これに伴って教室の数が増えるため試験監督なども増員するということです。
また、入試当日にキャンパス周辺で街頭演説などが始まった場合、配慮を求めて警備員が声をかける予定だとしています。
公職選挙法では学校の周辺などでは静かな環境を保つよう努めなければならないと定められていて、これを前提に配慮を求めるということです。
上智大学の秋山真一入学センター長は、「不利な環境の受験生が出ないよう、大学としてできるかぎり公平性を担保したいと思って対応した。選挙運動は大事だが、入試期間だということも頭に入れて配慮いただけるとありがたい」と話していました。
静かな状況保つよう求める声明を出す団体も

若者の意見を政治に反映させるための活動を行っている「日本若者協議会」は学校の周辺などで静かな状況を保つことを求める公職選挙法を前提に声明を出しました。
声明では音声を伴う選挙運動によってリスニング試験に支障が生じたり集中が妨げられたりするおそれがあるとして、選挙管理委員会には入試日程などの情報を候補者側に共有し受験生に影響が及ばないよう周知すること、候補者側には入試の日程や会場を確認し周辺で音声を流す選挙運動を控えることなどを求めています。

協議会のメンバーの中村眞大さん(23歳)
日本はまだまだ政治に対する関心が低いと感じていて、選挙カーや街頭演説は関心を持ってもらうきっかけとしてはすごくいいものだと感じる。自分が受験生の時は時計の針の音も気になるなど敏感になっていたので、選挙の音声となると集中力がそがれてしまうのは想像できる。予防できることでもあるので各陣営には気をつけてもらいたい。
どういう候補が出ていて自分の考えに合うのはどの候補なのかを考えると結構、時間がかかり、それを受験勉強の追い込みの中ですることはかなりハードルが高いと思う。人生がかかる受験と重なってしまって悩んでいる受験生はたくさんいると思うので、次に選挙をするときはそういった部分もしっかり配慮してほしい。
声明を出したあと、候補者側などから多くの反響があり、受験生への配慮が必要だという意識の広がりを感じているということです。
また、声明では選挙後は選挙への参加が難しかった受験生の声にも積極的に耳を傾けてほしいとしています。
模擬投票の特別授業 生徒の4分の1は出席できず

東京・千代田区の「麹町学園女子中学校・高等学校」では、国政選挙のたびに特別授業として模擬投票を行っていて、29日、高校3年生を対象に模擬投票が行われました。
学校によりますと、受験シーズンと重なった影響で対象とした高校3年生158人のうち4分の1のおよそ40人が受験を理由に欠席したということです。
参加した生徒の1人は「受験と重なったので投票には行かないという友達も少なくありません。どんどん進んでいく少子化が問題だと思うので、子育て政策を見比べて一票を投じたいと思います」と話していました。
大久保靖校長は「この時期なので模擬投票に参加できない生徒がいるのはやむを得ないが実際の選挙では期日前投票も含めて投票に行くよう呼びかけたい」と話していました。