1960年代に九州・福岡を拠点に活動した前衛美術家集団「九州派」。その女性美術作家の牽引役の一人として知られる田部光子さんの作品展が福岡市美術館で3月21日まで開かれた。戦後日本美術界における「九州派」の位置づけの再検証の流れなのだろう。

 私の福岡勤務時代、女性解放やジェンダーの主題での制作に限らず、その奔放な発言、生き方は世間の注目を浴び、「受胎藝術」などの著作も世に出している。

 私は今は福岡を離れている。で、手元に残している福岡市で発行の文芸雑誌がある。「季刊 午前」。この雑誌の表紙絵が田部さんの新作なのだ。平成3年9月発行の第2号から第12号までの11冊と、第17号、18号、20号、そして平成14年9月の第26号の合わせて全15冊。当初は文芸特集の内容の面白さで求めていたが、次第に田部さんの表紙絵のコレクションを目的に求めるようになった。

 バラの絵は、赤を主体に鮮やかな色彩と形。白バラもあり、赤いリンゴもある。金色の方形の構成など、多彩な構図を紹介。バラや菊の花のほか、生殖器をイメージした構図、さらにカットでも使われている手や腕のドローイングは大胆で奔放で、芸術に生きる自信を私たちに誇示しているようだ。

 なぜ、彼女が表紙絵を担当することになったのか、いきさつはおそらく創刊号に報告されているのだろうが、手元にはない。編集発行人は私の福岡勤務時代にお世話になった作家・北川晃二さんであり、氏と田部さんの想いが響き合うように表紙絵にうかがわれ、生命観あふれる表紙となっている。

 北川さんはこの時、心身ともに若かった。その表明を田部光子に託したのではないか。第2号の巻頭詩「蒼天」は氏の若々しい希望が表明されている。初々しささえ感じる田部光子作品が「季刊 午前」の出立を応援しているようでもある。