ロシアのウクライナ侵略に世界から批判の声が上がっています。

 プーチン大統領は核兵器使用の意図さえ表明、世界を核の脅威で従わせようとしています。一方のウクライナのゼレンスキー大統領は停戦交渉に臨みはするが、徹底抗戦の構えです。このままでは市街戦で、さらに多くの命が失われる危険は避けられません。

 

 もともと歴史的にロシアにはスラブ民族主義・事大主義が根深くあるのですが、プーチン大統領の強権的な性格がそれに輪をかけているようで、今回の乱暴な侵攻に重ねての核使用の明言は異常な独裁主義です。世界の政治・外交から追放しなければなりません。 

 

 大国ロシア周辺に位置する小国は、歴史的に独立国として国際政治・防衛など、大変な努力と忍耐で平和を保ってきた歴史を持っています。小国には、旧ロシア帝国時代とソ連邦時代に、侵略と併合の圧力をかわし、独立を保持する手腕が必須でした。

 

 その一国であるフィンランド。サウナとサンタクロースの国で馴染みがありますね。私の手元に1980年頃に手に入れたフィンランド大使館発行の小雑誌「フィンランド」があります。次のように書いていました。少々、古い情報ですが要約して紹介します。

 

 降雪・森林地帯で島と湖の国であり、温暖な夏と寒い冬が特徴。夏には73日間、太陽が沈まない日が続く(〝白夜〟で有名)。国土の約3分の1が北極圏内にあり、国境をスウェーデン(586㌔)、ノルウェー(716㌔)、ロシア(=当時はソ連、1269㌔)の3国に接しています。 

 そして安全保障について、フィンランドは「軍事同盟やある陣営に対抗するもう一方の陣営による保護の上になり立っているのではありません。中立と相互信頼の上に築かれた隣国諸国との友好的関係がフィンランド外交の基本となっています」、さらに「フィンランド外交の真髄は紛争の平和的解決を推進すること、国際協力を発展させることにあります。その平和的中立政策は国際的にも広く認められています」。その上で「国の領土、領海、領空を監視」するための国防軍を保持しています。

 また「対ソ連(当時)関係」の項目には、「1948年に友好・協力・相互援助条約が結ばれ、1970年に更新されました。この条約は、フィンランドの中立外交を確認すると同時に両国間の関係を規定する基本文書となっています」とありました。

 このような国同士の条約は、相互信頼の上に立っての約束事であって、クリミア半島を武力で併合したプーチンのロシアには、もともと当てはまらない常識なのでしょう。

 

 さて今、長崎県美術館で「ムーミン コミックス展」が開かれています。ムーミンはフィンランドのトーベ・ヤンソンと弟ラルスが企画・制作し、世界の幼子や母親、若者の漫画ファンを引き付けたフィンランド発のコミックスのキャラクターです。「マンガ原画やスケッチ、約280点を一堂に」とうたった展示会場には、特に若いファンが目立っていました。

 展示は1960年前後の作品「ムーミン谷の仲間たち」コーナーからスタートでした。私は即、「第71話 ムーミンたちの戦争と平和」コーナーに向かいました。3コマ1点が90点。トレーシングペーパーやボードに、鉛筆やインクで生み出されたお馴染みのムーミンをはじめ、ムーミンパパやママ、スナフキンやスニフたちが小さなコマに生き生きとお芝居をしています。

 同コーナーでは原画と併せて、こんな説明があります。

「筋金入りの平和主義者がムーミン谷にやってくる」「山クリップダッス対 谷クリップダッスの戦いが勃発」「矢を作ってやると〝武器商人〟とののしられる」「スニフが究極の武器を発明。両クリップダッスが究極の武装をする最悪の事態に」。この場面、ロシアとウクライナの戦争に似ています。しかし漫画では「ムーミンママがニョロニョロの大群を招集し、矢と電球の物々交換を提案。矢がなくなったクリップダッスは戦い不可能に。電球を手に入れたニョロニョロたちは電飾になってママの店を青白く照らす」などと、ムーミンママが戦いを阻止して平和を取り戻します。ニョロニョロはNATO諸国でしょうか、EUでしょうか、それとも国連?

 こんな漫画のコマと解説がありました。

「侵入できないように板でドアをくぎ付けに」「弓矢が窓にドンドンと」

「ここにユナイテッド・ムーミンを結成して休戦を勧告する」「なかなか、よさげに聞こえるね」

「戦いが続けられるって なんて平和なんだろう」「けしからん けがらわしい帝国主義者ども」

 プーチンさんに読ませたいコミックです。

 このムーミン。今回のテーマともなっている〝お尻〟ですが、こんなまん丸いお尻を向けるなんて、端から闘う意思の無い平和主義者ですよね、ムーミンは。

 でも今、ウクライナの人たちはロシア軍を真正面に見据えて戦いを挑んでいます。みなさん、ムーミンと一緒に声援を送りましょう。