昨日は季節外れの小春日和を思わせる穏やかな日だった。見上げる空は真っ青。ああ~と心の中で感嘆の声が上がった。

 家庭菜園に降りると、秋採りのジャガイモ「デジマ」の苗がいよいよ黄色着き、採り入れ時を伝えていた。気分が乗って草取りをした。フェンス越しの隣マンション側の丈の高い雑草も抜いた。来春には、フェンス手前に花開くだろう菜の花を、カメラに収める際の邪魔になる代物。気分が乗った時に片づけておくに限る。

 それにしても余りにも青い空。見上げると誰でも詩人になりそうだ。

 ということで詩集を取り出した。北川晃二詩集「蒼天」。詩人は私の福岡勤務時代、勤め先の社長であり長い文学生活に身を置いた作家であり、若い書き手を育てる名伯楽だった。1994年2月、病に倒れた。

 若き日の作品「奔流」(1952年)が芥川賞候補となり、以後、評伝「青木繁 その愛と彷徨」(

講談社)や、戦後、慕われながらも東京裁判で死刑台の露と消えた地元・福岡の文人宰相、広田弘毅の評伝「黙してゆかむ 広田弘毅の生涯」(同)などが話題となった。同人雑誌「季刊 午前」や「西域」の発行者としても尽力され、私も「西域」誌に一作、なぜか先生に頼まれて書いたのだったが、今も大先輩のその優しさを励みとして生きている。前口上が長くなった。

 

詩集「蒼天」の表題作「蒼天」-。(1991年9月)

                                (終連は文学記念碑に印されている)

九州山脈の山ひだを縫って

その頂に立ったとき

深い コバルトの空が急に展けた

天はどこまでも青く

真昼の太陽が 折重なる山々に清潔な光り

を注いでいた

 

ここに 人間の汚辱はなく

ここに 人間の妄執はなく

燃える太陽が

太古の自然 太古の生命を蘇らせ

虚空と虚無の被膜のうえに

人間の存在を鮮やかに描いている

 

蒼天に漂う白い雲よ

消えることのない この愛と生のすがたを

時の帷(とばり)の中にきざみたまえ