「向こう10年の新たなまちづくりの羅針盤」ーこんなうたい文句を掲げた「長与町第10次総合計画」の概要が「広報ながよ」5月号に4ページにわたって掲載されています。吉田町長の下での新年度からの町づくりの指針と課題が詳しく取り上げられています。
「今後10か年の行財政運営の基本」である『基本構想』と、前期5か年の施策を網羅した『前期基本計画』からなっています。
10年間に目指す町の将来像を「人・緑・未来 つなぎ はぐくむ ながよ~幸福度日本一のまちをつくる~」とのスローガンを掲げ、人のつながりによる安心の町、自然の安らぎのある町、産業振興で豊かな町ーを目指そうと呼び掛けています。「町民一人ひとりが手を取り助け合い」などの呼び掛けは、コロナ禍でよく耳にする〝自助・共助・公助〟を連想させられました。
『基本構想』は6つの「基本目標」からなっています。紹介しましょう。
①協働による持続可能な社会②心を育む教育と文化③創造性と活力ある産業④魅力あるまちと新しいひとの流れ⑤安全・快適・便利な暮らし⑥ぬくもりのある健康と福祉のまち
選挙政策のようでもありますが、決してスローガンでは終わっていません。それぞれの基本目標は、3項目から10項目の具体的な施策が「前期基本計画」として記されています。ここが大事なところでしょう。
自治会活動のお手伝いを始めた私には、この基本目標の①が注目です。施策欄には5項目が並びます。「多様な協働の環境づくり」「地区コミュニティ活動の推進」「自治会活動の推進」「経営感覚のある行政運営」「効率的な財政運営」。
子や孫と暮す私には基本目標②も関心事です。以下のような施策を挙げています。
「乳幼児教育・保育の充実」「学校教育の充実」「青少年の健全育成」「生涯学習の推進」「生涯スポーツの推進」「文化・芸術の振興」などなど…。「推進」 「充実」の語が続きます。
目標③の「創造性と活力ある産業」では、農業の振興、林業の振興、水産業の振興、商業の振興、工業の振興。こちらは5項目すべてが「振興」の語のオンパレードです。このような語の使い方は、読んでいて何かしっくりきません。
コロナ禍の現在、基本目標⑥も見過ごせません。
「感染症対策の充実」「医療体制の充実」「結婚・妊娠・出産・子育て支援の充実」「高齢者福祉の充実」。以上、ここでは「充実」の語で満ちあふれています。
そして、ふと思いました。各文章の「主語」は誰でしょう? 「町」それとも「町長」でしょうか、いやいや「町民」でしょうか? 読んでいて、なぜか当事者意識を刺激されません。町民は、町長ら町当局の施策実行をお手伝いする立場なのでしょうか。それとも町民一人ひとりに課せられた仕事なのでしょうか。
充実、振興、推進の語の頻出は、責任の薄い立場の人物だからできることでしょう。いわゆる書き放題の文です。当事者であれば慎重になるはずです。全体を眺めると、やはり単なるスローガンにも感じられます。その理由はもう一点あるようです。「数値目標」がない政策だからでしょう。いついつまでに何をどれだけ達成するーこんな具体性を込めた言葉がほしいところです。
みんなで力を合わせて達成する目標。〝誰が何をいつまでに、どれだけをやる〟。こんな具体的言葉を補足してはいかがでしょう。町民みんなで達成する、みんな「広報ながよ」5月号
の「総合計画」とするために。