大統領選真っ只中のトランプ大統領のコロナ感染が、昼のワイドショーで格好の話題となっている。出来立てほやほやの治療薬を大量服用? マスク抜きで退院して、支持者にグーッ。トランプのことだから芝居であって、コロナに打ち勝った強靭な男として売り出す腹積もりではないか? 「フェイクだ」などと、あの何かと話題の映画監督マイケル・ムーア氏が言っていると、お昼のワイドショーが伝えていた。

 フェイクか~。大統領のフェイクの話。作家の青来有一さんの小説「フェイクコメディ」(雑誌「すばる」2018年9月号)は大当たりの近未来小説だったようだ。キッシンジャー元国務長官が現れ、トランプ大統領が登場(いずれもそっくりさん?)。長崎原爆資料館を見学(見物か)する話。惨状を伝える数々の展示物に、大統領は涙を流した後、「核兵器がいかに恐ろしい兵器なのか、よくわかった」と言い、「わが国は、これからもしっかりと核兵器を整備していかなければならない、そのこともよくわかった……、わたしは合衆国大統領として、あらためて決意をかためたよ(略)核兵器の偉大な力をわかりやすく紹介している。ここはいい。」などと言う。

 文芸作品だから諧謔、アイロニー、暗喩などなど駆使した文章で真実を浮き彫りにしようとする。その意図と苦労話を先日、大村市での青来さんの講演会で聞いたのだが、読者の想像力を喚起しつつ依存することで物語を完成させるかのようなレトリックに共感した。

 ところで、やっぱり、マイケル・ムーア監督の予想通り、トランプ・コロナ罹患は選挙戦略のフェイクなのだろうか?