原憲生(のりお)さんは長与町で「まるはら」金物店を営んでおられる。日曜大工や家庭菜園の真似事をしている私も常連客の一人。ボルトとナット、ホースやドライバーなどを求めるのだが、生半可な知識で曖昧な注文をする度に叱られる。「そんなもの、ないない」「型番はっきりせんとわからん」。それでも遠慮のない客と主人の間柄で世話になっている。

 数えの90歳。取引のある大阪の金物問屋が言うには、長崎周辺で卒寿の金物屋はいない、とのこと。そのうえ合鍵も造っているからすごい。

 生まれ育ちは大分県の日田。20数年前に長与に来て店を開いたという。〝あぁ、それで店内に日田祇園のポスターが貼ってあるのか〟。故郷は遠くにありてと合点…と思いきや、「傘鉾造り」の職人だったと言うではないか。故郷の資料館に名前が記されていると。

 医者が、まだまだ現役で働けると太鼓判を押したと笑顔を見せ、「引退はできん、できん」。日田祇園の傘鉾の模型、お願いしますよ。