8月9日の長崎原爆の日、平和祈念式典の閉会後、「平和」に関する美術の催しを鑑賞して回ったことは先日、お伝えしたが、ここではその続編。タイピント画廊の平和展に出品されていた石田智(さとる)さんの被爆者の肖像を紹介したい。

 石田さんは長崎市の日本画家。和紙に、岩絵の具を濃密に塗り込んだ画面は、油絵の趣が漂い、異質な日本画である。 

 石田さんの父君を描いた一点は、ケロイドの残る肩から腕をグイと前に突き出し、被爆の酷さを知らしめようとの意思を表わしている。濃密な岩絵の具が、ケロイドの肌の様相をリアルに表現。画家自身、幼い頃から見て育った〝父の腕〟である。

 父君が本当にモデルになってくれたのかどうか、顔には笑みが覗く。その顔立ちは、教師らしく聡明で知的であり、原爆告発より、石田さんの父への敬意と思慕が伝わってくる。「被爆者の肖像」とメッセージにあるが「父の肖像」こそ、ふさわしいと感じた。

 被爆者の肖像は、子供を抱いた山口仙二さんや笑顔の福田須磨子さんなど計4点。いずれも笑みを含んだ明るい表情で、希望を表現した画面である。

 タイピント画廊平和展は15日まで。