文化庁が先ごろ、「シュガーロード」を日本遺産に認定した。長崎、佐賀、福岡などの8市が観光振興を目的に申請していた。

 認定を報じる長崎新聞によると「シュガーロードは長崎から小倉に続く『長崎街道』で、独自に育まれた砂糖文化に焦点を当てた」とあり、長崎では出島和蘭商館跡のほか、お菓子などでは「カステラや諌早おこし、大村寿司など」が対象とある。

 ところで先日、長崎市内で唐寺研究会の集まりがあり、持ち寄りのお菓子に長崎の梅香崎神社(大徳寺)の「梅ケ枝焼きもち」があった。そこで、元福岡在住だった会員の男性が、「太宰府の梅ケ枝餅は元々、餡は無かった」と茶飲み話に言うではないか。私が、「いつから餡入りになったのですか」と問うが、それは分からないと。

 そこで私はふと思ったのだ。餡入りは出島貿易以降のことで、シュガーロードの賜物ではなかろうか。

 太宰府天満宮文化研究所に電話で問い合わせてみると、「餡は昔は贅沢品でして、焼みそを付けたお餅だった。神社の御下がりとして参拝のお土産にしていた。いろんな資料を見てきたが、その辺りについての記録を見た記憶がない」と学芸員さん。ただ、「長崎街道を通って参拝に来られていたので、長崎の砂糖の使用も考えられますね」と、うれしい推論をいただいた。その名の由来も「質素な暮らしをしていた道真公を見かねたおばあさんが、梅の枝を添えて道真公を接待した」という故事によるらしい。なんと尊いお餅であることか。

 元々、餡が無かった梅ケ枝餅。そこに甘い砂糖の餡を入れることが可能になったのは「シュガーロード」のおかげ、出島あってのこと―と、まあ、勝手に想像が膨らんでくるのだが。真相やいかに?

 

 それにしても「シュガーロード」の名称。長崎新聞新書「シュガーロード」などの著書のある編集者で作家の明坂英二さん(1931-2010)の発案による命名だ。商業や観光、メディアで普通名詞として今は頻繁に使われるようになったが、生前「シュガーロードを商標登録しておけばよかった」と苦笑いされていたと聞いた。今回の日本遺産認定で功績のある明坂さんが、どこにも取り上げられていないのが気になる。認定を機会に行政をはじめ観光業界、新聞・放送などメディアでもぜひ、人となり、全仕事を振り返ってほしいと思う。

 ところで梅香崎神社の梅ケ枝焼きもち。今は境内の茶屋「菊水」で注文を受けて焼いている。4個700円から。太宰府天満宮の餅と違い、アンパン並みの大きさ。甘党にはこたえられないが、私など一つでも満腹になる。覚悟してお買い求めを。