元職場の同僚と町で出会った。近況を尋ねると、ボランティアでおもちゃの修理をしていると言う。年配者らの趣味の全国組織「日本おもちゃ病院」に加盟。長崎の仲間と活動して7、8年になるという。

「おもちゃは、こどもにとっては友達、おとなにとっては骨董」この彼の言葉に興味を引かれ、詳しく聞いた。

 幼い子供は壊れた人形であれゲーム機であれ、修理できなくても〝早く返して〟と取り戻したがるという。子供にとっては少々傷ついていようが、遊び相手、友達なのだ。

 一方の大人だが、〝修理は無理〟と知るとガックリ、廃棄物扱いになるらしい。大人にとって玩具は思い出の品であり骨董的価値のものという。

 

 彼の修理の対象は、ぬいぐるみ各種、ブリキのロボットや船、車、ゲーム機などなど幅広い。

電子ゲーム機まで扱うのだが、細かな歯車の入り組んだアナログ時計は無理という。実際これらは玩具ではないのだ。

 それでも車いすの女性から「いきがいの品」と言ってお願いされたオルゴールは断り切れず修理に挑戦、蘇らせたという。

 

 修理作業は月に2、3回、決められた公の施設で取り組んでいる。ボランティアだから報酬はもちろんないが、材料費だけはもらう。この日も町に材料を調達に行く途中だった。修理の数「年間目標100体」と決めている。今年も100体越したらしく、これまでの修理実績は合計1000体に達するほどという。

 ラジコンや電子ゲーム機まで修理するというからエンジニアだ。彼は現役時代から優等生このうえない人物だったが、このボランティアに必要なのは「優しさ、思いやり」ときっぱり。

 腹話術の人形を持ち込まれた時は難儀したらしい。知識がなく、慎重にお腹を切り開き、からくりを調べて蘇らせたという。「好きこそものの上手なり」と水を向ける私に、「遊びだけじゃない。役に立ち喜んでもらえるから続く」と、さすがにボランティア精神旺盛。

 長崎はなぜか会員が多いらしい。お土産の骨董や西洋人形の町、ブリキのおもちゃ、オルゴールの町なのだろうか。味わいある長崎の一面を教えてもらった。このごろ多い電池交換できないおもちゃ。ぬいぐるみはお腹をあけてボタン電池を、ラジコンは車体を解体して錆びついた端子を交換した。いずれもメイドイン・チャイナだ