地元、長与町内で現代美術の個展が開かれているというので行ってみた。
会場は岡郷の一本松バス停そばの物産と喫茶の店「ボーダレスラウンジ」。大村湾を見下ろして多良見町に向けて走る国道沿いの旧ミカン選果場兼倉庫だ。
店を知らない私は、自宅から自転車で気楽に行けると思っていた。エッチラオッチラ…岡郷の峠を越して、また馬込の峠も上って、何度か行きずりの人に会場の店の在り処を尋ね、時間にして1時間弱。やっと下り坂で楽になると思ったら、足下に目指す店があった。
海側に少し下った店の手前に現役倉庫があり、その屋上ベランダに設置された作品が私を迎えてくれた。フェンスにマスキングテープを巻き付けて制作したインスタレーション(空間芸術)とキャンバス作品各1点。インスタレーションを見上げていると、背景の大空に飛行機雲がグングンと尾を引いていた。さわやかな秋晴れが製作した自然のこれも美術作品と、しばし眺め入った。ひょっとして作家の織り込み済みか。
美術作家、波多野慎二先生は私の現役時代、仕事を通してお世話になったエネルギッシュな制作で知られる方だ。長与での個展は何回目になるのか。
作品は店の入り口付近の板壁に、縦約2メートル、横約1・5メートルのキャンバスの大作を中心に、屋内外全36点を展示。多彩な色の棒状の束が縦横無尽にぶつかり、重なり合う画面。制作コンセプトに、長与の風土に息づく命の鼓動を色彩と形にした、といった趣旨の文章が添えてあった。
平面作品の展示は、壁に取り付けた大作の手前に、縦約35センチ、横約30センチの小品を1、2点吊るす手法。大村湾の海風がミカン山に吹き付けてきて跳ね返り、店の広い入り口から会場に緩やかに吹き込んでくる。その風にあおられて、小作品が同じ絵模様の大作を背景にゆらゆらと揺れ、画面全体が動き出す。多彩な色たちがコミカルに揺らめき、平面から飛び出してきそうだ。大村湾の風の色彩。これも長与の生命力の発露かと考えさせられた。
会場の店は、衣服など生活用品を主体にした物産販売と、喫茶を営む。初めて訪れたが、広いスペースに個性的な生活用品がゆったりと並び、楽しい品ぞろい。さまざまなチラシやパンフがそろい、地域の文化情報発信の役目も担っているようだ。
現代美術展は11月1日まで。