魚は匂いを〝クンクン〟とは、やっていないようだ。
遡上するアユが川底の石に付着した苔をついばむ様子は、クンクンしながらのように見えるが、ひたすらツンツンとやっているさまか。
こんなことを思ったのは、27日付「長崎新聞」釣り欄の新連載「さかなの不思議①」を読んで。
魚には顔の両側に鼻の穴がそれぞれ二つずつ計4穴あると、豪快な真鯛の顔のアップ写真を添えて説明。
魚たちは当然、水に溶解した匂いを捉えるのだが、「前の穴から水を入れ、後ろの穴から抜き出す」仕組み。そのうえ、私たち哺乳類と違い、「穴は口腔につながっていないため、息を吸ったり吐いたりできない」。ただ、ただ、匂いを水の流れに乗って受動的に嗅ぐ(取り入れる)ばかり、という。
で、魚くんたちは、クンクンをしておらず、ツンツンしている、というわけ。
古い「広辞苑」をひも解いてみた。クンクンは載ってなかったが「くん」があった。「気息を鼻に通じて発する声。匂をかぎ、煙にむせびなどする時の声」と。参考までに、これも年代物だが電子辞書には「においを嗅ぐために鼻で小刻みに息を吸う音」などとある。
この魚の仕組みは、サメも哺乳類のクジラも同じなのだろうか。さらにさらに7400万年前、小さなトカゲが進化して誕生した海の大型恐竜モササウルスも鼻は魚と同じ仕組みなのか?
クンクンするさまは犬・猫が代表的だが、匂いの良し悪しを選ぶ行為。生き物の進化した姿の一形態には違いない。
鼻を大切に、おおいに深呼吸を。そしてクンクンもしよう。2019年9月27日「長崎新聞」