白内障手術をして3カ月。すっかり視力が戻り、パソコン仕事も映画鑑賞も楽になった。

 景色だけでなく人の心の中も見えるようになった?気がする。

そこで川柳3句

 白内障治癒して見えて伴侶見直す

 あいまいな輪郭こそがあなたの美

 見つめる目見られ見返す心の目

                 ◇

 水上勉に「眼」と題した長編ミステリーがある。

作者は登場人物の性格を、その目の特徴を細かく描くことで表現している。

大団円は義眼が演じるのだが、目が主人公のような不気味さが全編に漂っている。

 ポール・オースターの「幽霊たち」だったか、主人公の私立探偵に不思議な依頼がくる。

事務所向かいのビルの部屋の男の動静を窓から監視する仕事。

見ているうちに、向こうの男がこちらを監視しているのでは?との疑惑にかられてくる。

見ているのか、見られているのか…。果ては彼こそ依頼人ではないか、との疑惑まで。

 見る、ということは怖い事。このごろの世の中、一層その観が強い。

 歩いていて、電車内で、図書館で…〝あっ、知り合いの人〟と思って見つめたりする。

人違いの時、妙な誤解を招く。

気まずい思いをしたことが何度かある。

相手が男性の場合〝眼を着けた〟などと諍いのもととなりかねない。

 見えない時は見ようとして目を凝らす。見えたら見えたで広がった世界に目を凝らす。

見えることは幸せなことだが、必要な範囲でいいと今は思う。

眼鏡のレンズもそう。医師の配慮で、目の疲れを考えて度をワンランク落とした眼鏡だ。

 何ごとも度を越えれば厄介になる、ということだろう。