春の七草「ホトケノザ」というホンワカする名の野草を改めて手に取って見た。

 大通りから住まいのある小高い山中に向かう緩やかな旧農道の畦に群生していた。

 この道はかつて、町特産品のミカン農家の農道だった。

片側が高さ1~2mの崖になっており、その上にはミカン畑が広がる。

この崖は古く、石積みが崩れた部分があり、広く土が漏れ出ている。

その土手のようになった個所にホトケノザが群生しているのだ。

 丈は短いが、意外に長く這うように咲いているのもある。

葉は細い茎に3、4センチごとに直径2センチ弱の円状に着けている。

この形が座布団ようで名の由来となったという。

 花は丸い葉の中心部に2輪から4、6輪着けている。それはそれは小さい可憐な花だ。

縦1センチぐらいの赤紫。品もある。

つぼみは、ゴマ粒くらいの濃い赤色。広範囲に広がっている。

だが、春の日がまともに当たる地域の群生では、早くも花開いたようだ。

 この花、よく見ると燭台を持った着物姿の女性のよう。シャナリといった雰囲気。

ホトケとは観音様のことかな? 貴重な野の花を発見した気分になった。

 以前、妻の故郷の高原でネジバナの群落に有頂天になったことがあった。

あの時と、同じ気分だ。

 このホトケノザ。住まいの壁下のアカ道にも幾つも咲いていた。気付かなかった。

 可憐で小さい野の花も、群落となると見ごたえがある。

私は、なんだか宝物を発見した気分になり、1本手折って持ち帰った。

今、玄関の小さな花瓶に可憐な姿をのぞかせている。

 孫の送り迎え、私の医者通いで毎日、歩いている里の道。

他に、白い花が散らばるように咲いている群落がある。これはナズナか?

そして紫の小さな花々はつゆ草? 

では百合の花のミニミニ版のような形の黄色い花の群落は何だろう?

 春も本番、暖かさに山里の花々が一斉に咲き誇ってきた。

 たくさんの野の花たちに元気をもらった思いである。