ある朝、喉が乾いて痛みがある。鼻水も出る。
インフルを警戒して、風邪ひきには注意していたのだが、結局このザマである。
昼前には全身がだるくなり、節々に痛みが走る。
家人が「インフルエンザでしょ。こどもにうつると困る」と医者行きを勧め、これ見よがしに咳をして体がだるいと主張しはじめた。
翌朝、8時過ぎに近所の内科にかかった。触診の後、鼻の奥にコヨリのようなものを差し込んで検査。痛くはないが、なんとも気持ち悪い。言葉で表現しきらない。アワワワワ…、とでも言おうか。60年を越える人生でも初体験があったのだ。いや体験したようでもある。
案の定、A型インフルエンザだった。
結果を聞いて、気の張りがなくなり、さらに体がだるくなった。
しばらく医院の隣室ベッドに体を横たえて休んでいた私の耳に、インフルの診察を受けていた幼児が突然、ギャーと泣き出した。
抱っこした母親が笑いを含んだ声であやす様子がうかがえる。
私ははは~ン、鼻にこよりをやられたなと、ほのぼのした感じになった。
帰宅後すぐに飲むように指示された抗インフル薬をはじめ、痰を切る薬、鼻水の通りをよくする薬、ほかにもう1点あったようだが、たっぷり手渡された薬はいずれも食後に飲む決まり。
しかし私のように、1日1食や2食の食事が不定期な不摂生人間には、薬を飲む機会がなくなるのだ。結局、適当に各薬を仕分けて飲むことになる。薬は飲めばいいのだ。
翌日には、体のだるさは残るが熱は下がった。
家人3人もどうやら風邪被害妄想狂から回復したようで、普段通りの喧騒が蘇った。
今回の診察で意外だったのは注射がなかったこと。インフルの疑いでこれまでも何度か医者にかかった。たしか抗生物質のようなものを打たれた記憶があるのだが、私の記憶違いでしょうか。
ここで一句、
幼な児の 泣き声注射 今こより