「神経痛ですな」。
マッサージに通っている近所の整形外科の院長先生の口から意外な診断結果が告げられた。シンケーツウ。私とは関係のない、またこれからも縁のない病名と思い込んでいた。この俺が神経痛だって?
理髪師一筋に生きた今は亡き母を度々、苦しめていた病名。母のための名と思っていた。それがこの私に告げられたのだ。シンケイツー。
最初は腰骨と大たい骨の付け根の部分的な痛みだったが、3週間も経つと、我慢ならんほど右脚全体に鈍痛が走るようになった。膝を曲げるのに苦労するほど腰と右脚に痛みが走る。先生は付け加えて腰の軟骨も少々すり減っている言った。
原因は分かっている。がむしゃらな草取りの結果だ。このくそ暑い中、我が家の庭に加え、この度、私どものボランティア作業となった自宅壁下のあか道の草取り作業。庭は文字通りの猫の額ほどで、草取りは今に始まったことではなく、そんなに苦にはならないが、あか道は難関だった。
幅1~2メートルで長さ約20メートル。もともと農業用ため池だったが、10年ほど前、宅地化が進み埋め立てられ、マンションが建った。ため池時代の周囲を取り囲むあか道はそのまま残され、隣接する住民らで家庭菜園などに利用することになった。
お隣さんたちの努力で菜園化が進む中、怠け者の私の下だけ大型の雑草でジャングル状態に。いよいよコンクリの壁をつる草が這い上がり、庭に侵入してきた。
ジャングルは役場が撤去してくれたのだが、あとの世話はお隣さんたち同様にお宅でやってくださいと依頼された。イラクサなどの根茎類が繁茂し、油断しているとアッという間に丈の高い雑草畑。草取りは毎週のボランティアとなった。
という訳で、柄にもなく奮闘。雑草の根絶目指し、ゴボウか太い自然薯のような根を引き抜いていった。連日の真夏日による体力消耗もあり、この作業が腰と大たい骨の付け根に響いたようだ。
しかし治療の甲斐あって翌日には痛みは消えた。週2回の電気マッサージ、背と腰のローリングマッサージ、腰の牽引が効き目十分で、施療後には気分一新できる。
私は今、我が家2階から黒い防草シートが広がる旧ジャングルの様変わりした景観に安らぎ、わずか3本だが茎を出したコスモスの無事な成長に期待を寄せて満足な日々である。
しかし……、パソコンをたたく今も腰が痛む。ますます痛い!。