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ブログなプチギャラリー3月21日



3月21日金曜発信






こんにちは!

今週前半、暖かい日がやってきて、先頃の大雪や寒さをころっと忘れそうになりました。

でも「冬将軍」なんて乙ないいまわしも急になくなると、それはそれで、寒かったのはそんなに前じゃないのに、少しさみしいです。
自分を鍛えてくれた「鬼コーチ」が現場を去っていく時みたいな切なさであります。

季節の移り変わりって、冬から春だってやはり切ないものですよね。

だからというわけでもないけれど、あまりに素早く、ころっと春のお店作りをするのは人情味にかけるような気がします。


ですので、世間さんとは少しずれながら、さよなら冬さんとして冬っぽい絵と短い物語を、冬の終わりとしてお届けします。

そうして次回から、春な感じで行けば、私としては無理なく春を迎えられます。

誠に身勝手ではありますが、よろしければ、お付き合いくださいませ。



ある偉大な男の話です。


20世紀初めの年、1900年スコットランド。
少し痩せぎすで、時折不安そうな表情を覗かせる位で、彼はおよそ個性的とは呼べない普通の青年であった。
青年は農業を営む両親や知人の勧めもあって、さほどの考えや目的もなく流されるようにここスコットランドの南部の町、キルマーノックの工芸学校に入学した。
そして、すでに商船会社への就職が決まっていた18歳の冬、この不思議な体験をする。



例年になく寒さの厳しい冬であった。

ここ数日、青年は質(たち)の悪い風邪を引いていたが、今日は少し体調も戻り食欲も出てきた。

「何か食べなければ」と思ったが、外は雪。

雪では行付けの馴染みの定食屋へ行くにも、少し億劫である。

そこで青年は、つい一週間前にこしらえた、スープが残っていたのを思い出した。

だが、火にかけ温めなおそうと鍋のふたを開けて、がっかりする。

ジャガイモとタマネギのスープのはずだったのに、まるで夏のナスのスープのように鍋の中は青色と紫色のまだら模様を呈していた。

部屋の暖房もあってか、スープの表面が青と紫色に変色、カビが繁殖していたのだ。

「これじゃ食べられやしない」

と青年は残念そうに鍋のふたを閉じた。

すると、どこからともなく声がする。

「ふたをしめないで、ふたをしめないで。」

部屋のどこかでささやくような声なのだが、もちろん部屋の中は彼ひとりである。

空耳だろうと思いつつ、窓から雪の降りしきる外を見ると、親子と思われる二人が傘の下、立ち止まって何か話しをしている。

「ふたを閉めると、死んじゃうよ」

と子供がいうと

「大丈夫、ふたを閉めやしないわよ」

と母とおぼしき女が、何か入っている瓶のふたを開けている。

一体どんな会話をしているのか。青年には全くわからない。大方子供が、メダカか何か買ってもらった帰り道なのだろう。

ただ2階いる自分に外の通りの親子の声が、まるで耳元で話しているようにも聞こえ、おかしなこともあるものだと思う。

が、きっと風邪の熱のせいだろう、耳の奥がおかしくなっているんだろうと思い直し、窓の外の親子から目を離し、部屋の中を振り返った。

と、驚いたことに、さきほど閉じたはずの鍋のふたが開いている。さらに、そこから湯気まで立ち上っているではないか。

火はついていないし、ふたを開けた覚えもない。まして湯気が上がっているのはどうしたことだろう。

外との温度差が激しいと、空気中の水分は湯気として見える場合もある。

思わず青年は、自分の息を思い切り吐いて見たりした。

そして何か不思議な現場に立ち会ってしまったような、苦笑いを浮かべていると

「ほらね、青いのは生きるけど、紫色のは少なくなるでしょ」

と、今度は鍋の中から、先ほどの子供の声がする。

びっくりして青年は鍋の中の、青い色のカビと紫色のカビを覗き込んだ。

すると今度は母親の声で

「青いのはね、ふたを開けると生きるけど、紫のは少なくなっていくのね」

と言い、

「じゃやっぱりふたは、開けたままがいいよね」

と子供が言う。

「ふたは開けたままがいいよね」

とまた母親も同じことを言う。

青年には外の親子が、この鍋の中のカビの話をしているとしか思えず、声をかけようと慌てて窓を開けた。

しかし、降り続く雪景色の中に、親子の姿はなかった。



雪の日の親子の会話を、青年が偶然聴いただけかも知れないし、あるいはそうではなかったかも知れない。

ただ彼は、この不思議な雪の日の親子の会話を、記憶の深い深い所にとどめた。

そしてこの不思議な体験が催眠術の暗示のように効いたのか、28年後彼が細菌培養の実験中に、本来ふたを閉めるべき器具のふたを閉め忘れたことで、世界初の抗生物質ペニシリンの発見をすることになる

青い色のもの、とは青カビでありペニシリンの元になる。ペニシリンは他の細菌の発生を抑え、結果として病気の治療薬として開発されることになる。

彼がシャーレのふたを閉めなかったのは若き日の深い記憶がそうさせたのか、単にうっかりミスだったのか、おそらく彼自身も応えられなかったのではないだろうか。

歴史的な発見とは、こうしたあいまいで、不合理な日常が作り出す場合が多くあります。

青年の名前はアレクサンダー・フレミング。

青カビから世界初の抗生物質、ペニシリンを発見しノーベル賞を受けています。
この単純ミスからの歴史的発見については、面白いエピソードとして多くの方の著述があるようです。
ご興味のある方は、調べて見ても楽しいかも知れません。


抗生剤の製造使用についてはいろいろご意見をお持ちの方も多いと思います。

特に自然治癒力、自然治療などを心がけていらっしゃる方は近代、現代にかけての細菌、ウィルスとのイタチごっこのような状況を心配されて居るのではないでしょうか。

子供を育てた経験からすると、この医薬品としての抗生剤のパワーはありがたいものがあり、多くの人の生命を維持していることは、やはり否めないことだなあと思います。



でも日本でも田舎にいって、古いおばあちゃん(新しいおばあちゃん?)なんかにきくと
「むかしゃー、ねーつこ出ると、その辺の餅にへっついた、あーおいかびっこひっけずって、くったのしゃ。せぎこも、ねーつもすぐけえたのしゃ」って言ってましたので、おばあちゃんにノーベルのマーク入り座布団、5枚セットであげたい。



今回の絵は冬っぽく、かつ古い描きかたをしたくて描きました。古い絵っていうか、安心して見ていられるものって感じかな。

昭和の冒険小説の挿絵見たいな、いいな。

また次回も古くさい絵で何かしたいですね。でも分かりません。全くその場しのぎのブログです。

でも、もう一枚、春のきざしの絵をどうぞ





HPでは短編小説「佐伯警部補の肖像」3-3終了回アップ

美術でワクワク桃丘舎HPもよろしく!

(ブログ、HPとも大体金曜日更新しています)
では、また。


おわり


ブログなプチギャラリー3月14日



3月14日金曜発信






こんにちは!

今週半ばあたりから冷たい風がおさまり、暖かい光が射してきました。みなさんの所はいかがでしょう。

東京の西はずれはようやく「春のきざし」が感じられるようになりました。で今回は何だか浮かれ気味のため、サクサク書きつつも言葉使いはアルチュール乱暴です。(古っ)


こういう時期に誰かに「やっと春のきざしだねっ」っていうとたいていの人は「うん」ってニコニコします。

それで、少しだけど仲間な感じとかを持ち合ったりします。

「良いことは分け合おう」です。

あれ?ちょっとちがうかもです。

「悲しいことは分け合おう」だったかもです。

でも今私はいかれて、でなくて、浮かれていますので「苦しいことは食べ合おう」でもへっちゃらです。

へっちゃらなんですが、たまに「俺は冬の方がすきだよ」て切り返してくる方もいらっしゃいまするめいか。

こんな「春のきざし」にかなり浮かれている私でも、「俺の好き好き」は変えようがありません。「仲間な感じ」を撤退ー撤退ーってさせながら「だよねー」って言ったりして「分け合おう」も負けたりします。

その人がどう思うのか分からないのに、その人に相づちを求めたりします。自分を振り返ると、案外無理に相づちをしていることなんかもあるし。

今日は人は外からでは分からないということを、あらためて考えてみました。

外の方が気持ちいい季節になると公園なんかに出かけて、すきあれば誰彼無く声をかける私ですが、もちろん話かけにくい人もいます。

ダントツに話かけにくい人というのは、光のあたらない陰に居る人です。陰に居る人にわざわざ近づいて行ったら、逆に私がこわがられますよね。

日差しがきついから陰に、という夏場には確かにたいていそうですが、そうでない季節にもやはり日のあたらない場所を好む方はいます。


さてここであなたに、この絵の中の日陰に座る男がどんな人なのか、想像していただきたいのです。過去に何があったのか、今彼が何を考えているのかを自由に想像してみてください。

想像していただきたいので次の記述は、ずーと後にします。




          想像してください




          想像してください




          早くスクロールしないでください




          念じてください




          念じてください




          ほら少しづつ、ほら少しづつ




          スプーンが柔らかくなっていきます




          念じてください




          想像してください




          お疲れ様でした


1.
横にいる母娘をながめ、昔別れた妻と大きくなったであろう我が子を思う。

2.
病院からの検査結果に落胆し、酒かタバコかどっちか止めろよと自分を責め続けている。

3.
眠らず、塾にも大枚注ぎ込み、夜食もたらふく食いつつ勉強したのに、受験には不合格だった。

4.
貢ぎました、ええ貢ぎました、スッカラかんになったあたりで彼女にふられました。

云々。

こんな中から一つ選べそうですよね。

で、想像していただいた方には申し訳ないのですが、実際は分かるわけがないのです。

日陰にいるということで偏見を持ち、どのみち多くはあまり良くない、でもどうだっていいような想像ばかりになります。

実際は本人に尋ねないと誰にも分からなくて、実はおちついていろいろ考えたい人だったり、軽い紫外線アレルギーのため陰にいるだけ、だったりします。


いまさらながらですが、人って外からはほとんど分からないものです。
すごく明るい振る舞いをしている人でも、実は大きな悩みを抱えていることもあるのですから。


伊集院静さんていう作家が何かで言っていたけど、大勢の人のいる公共の場所では大きな声で笑ったり、ばか騒ぎは止めなさいって。

たった今家族が亡くなった人でも通りを歩く時は、普段の顔で歩かなくちゃいけない。
通りに限らずたくさんの中にはそんな人がいるかもしれない。静かにそっとしてあげなければいけない人は、外見からは分からない、と。

本格的春の来る前に、ついはしゃぎ過ぎてしまう自分自身に言い聞かせたブログでした。

だけど、満開の桜の下でのばか騒ぎは好きだよ。
「どしたー元気ないぞーよおしのむぞー」って。


今週のプチギャラリーはもう少し絵を掲載させてください。
現在私はブログの他にホームページを発信しています。

HPの表紙をフラッシュで作ってありますが、3枚の絵のスライドが早すぎて良く見えません。
なので、今回のブログでHPの表紙絵を紹介させてください。
3枚とも現在懸命に企画している「川べりの住民たち展」
<HPはここ>
の展示作品です。

「野の花」紙に水彩



「夜の散歩」紙に水彩



「山の分校」紙に水彩


こういう絵って好き好きがあると思うので、もう一枚ちょっと写実的なのも掲載します。




「桃とぶどうと花梨」(そのとおりの題)キャンバスに油彩
 
 

HPでは短編小説「佐伯警部補の肖像」が始まりました。

HPはここ。

よろしかったらお時間の許す限り、お読みください。
(ブログ、HPとも大体金曜日更新しています)
では、また。




おわり


ブログなプチギャラリー3月7日


3月7日金曜







「だからそういう考えはよしなさいっていうの。」
家の前の残り雪を取り除いていた私は、穏やかだがはっきりと聞こえる女性の声に顔をあげた。

目の前を通り過ぎる若いママと、5~6歳の男の子である。
男の子には全くママの声は届いて無くて、ママの横を楽しそうにケンパーケンパーして歩いていた。
ママの言うことはどこ吹く風なのである。
なんだか子供はあっぱれだなあと思う。
だって子供だからといってそう簡単に考えを止めたり、変えたりするのは変である。

我が子を大事に育てるママのいうことは、きっと正しくてもっともなことなのだろう。でもやはり簡単に考えを止めたり、変えたりするのは不自然である。逆にそう簡単に考えを止めたり、変えたりするようではこわいと思う。

それじゃ、と簡単に考えや人格を変えてしまうものを、考えて見た。

宗教とか、不慮の事故とかいろいろな出来事が人を変えることにはなるのだが、いまいち変わり目がフツーである。
劇的に人を変化させるものって何かないかなーって考えたら、フッとうかんだのである。


「怖くないのよー怖くないのよー、一度噛まれてしまえばすぐ平気になるからー」って

何がこわいって、咬まれただけで人格が変わり別世界に行っちゃうのが怖い。
ヘビ女さん、咬むなら何も言わずに咬んでおくれ。
考えや人格がころっと変わるのはこんだけ怖いことなのだから、ママの言うことどこ吹く風のあの男の子は、やはりあっぱれである、と思ったのである。



今回のプチギャラリーは「咬まれて痛い別世界」をテーマに描いて見ました。
咬まれたり、転んだりして、痛みを感じるまでの一瞬、ほんの一瞬だけど何か別世界にいるように思ったことはありませんか?誰もいない、ここはどこって。

魚に咬まれ、痛みの来る予感。何かに支配され、一瞬氷ついちゃった女の子。

「いたーいっ」



3月に入りましたが東京地方、今日もまた寒いです。
でも春までもうちょっと。なので少し春っぽい、花の絵もどぞっ。





美術でワクワク桃丘舎HPでは、
古い一枚の絵画から・短編「佐伯警部補の肖像」が
始まりました。ぜひお読みください。
こちらからどぞっ。




おわり