政府統計の「中小企業実態基本調査」(法人)という資料がある。
この資料では製造業の売上高に占める地代家賃比率は平均0.64%となっている。比率が低い理由は、製造原価の中の家賃が除外されていること及び賃貸物件比率が低いからである。もし0.64%を使って売上高収益還元法を使うと工場家賃の過少推定となるだろう。
ところで上場大手製造業の減価償却率を見ると平均5%になっていることが分かる。勿論、この中には機械設備の償却費も含んでいる。中小企業の製造業は設備投資が大手に比べて不活発だから、これよりも低いはずである。統計資料を欠くため、とりあえず4%としておく。たしか中小企業白書に大企業と中小企業の使用設備の平均年数があったはずなので、そのデータを使えば、より正確に出せるかもしれない。
大雑把な計算をしてみよう。
<前提>
自社所有物件比率90%:賃貸物件比率10%とする・・貸工場の多い地域を除き、所有が中心
建物減価償却費は不動産維持経費(減価償却費を除く)の2倍とする(=40)*
不動産維持経費(減価償却費を除く)は家賃の20%程度とする
建物と設備の価格ウエイトは1:2とする(上場企業の取得費データを参考にした)
家賃を100とする
自社所有物件は家賃がかからず、賃貸物件は建物減価償却費が掛からないので、物件のウエイトを掛けて求めた。機械設備は自社所有、賃貸物件共に企業所有とする。
減価償却費=建物40×自用物件のウエイト0.90+設備80×ウエイト1.0=116
家賃=100×賃貸物件のウエイト0.1=10
売上高=減価償却費116÷減価償却費率4%=2900
賃貸物件の売上に占める家賃比率=家賃100÷売上高2900=3.4%
工場延1000平米当たりの年間出荷額は4.5億円ぐらいなので(従業員30人以上)、年間家賃=出荷額4.5億円×0.034=1530万円
月当たりの家賃坪単価=年間家賃1530万円÷延1000平米÷12月×3.3=4208円/坪
工場に近いと思われる貸倉庫の賃料相場坪単価を見て見ると
・埼玉 4200円
・千葉 4000円
・東京 6600円
・神奈川5800円
・京都 6700円
・大阪 6000円
・兵庫 6500円
埼玉県か千葉県ぐらいの水準ですね。
整理すると
売上高に占める家賃の比率(貸工場の場合)3.4%
出荷額と家賃比率から計算した家賃坪単価 4208円/坪
前提条件の検証が終わっていないので、これは仮の数値である。AIでデータマイニングすると、自動評価できそうですね。