生コン工場の鑑定評価 | 猫好きのブログ

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  生コン工場は製造業に属するが、業界の独自性がある。

 

 工場の立地は生コンを使用する現場搬入の効率性を考慮して選ばれる。生コンは硬化が始まると品質が低下するので、製造から搬入までの時間的な制約があるのだ(製造後90分以内に使用する必要がある)。ミキサー車が走りながらタンクを回転しているのを見ると分かるだろう。

 

 昔は生コンを現場で作成していた。博物館で見たことがあるが、舟と言われる四角形のたらいのような器に職人が材料を混ぜて必要な分を作っていた。

 

 だが生コン工場で作った方が品質が安定し、調合することで全体の容積が減少し、輸送費も下がり、集中生産による製造費も下がることから、生コン業者による供給が主流となった。

 

 また立地制約は搬入先だけではない。セメントや骨材などの原料の調達が容易な場所であることや騒音・粉塵の影響を最小限に抑える必要があることも重要だ。

 

 次に工場の構成要素を見て見よう。

1.材料の受入・貯蔵施設、サイロ

 

2.パッチングプラント・・・材料の計量、ミキサーに供給する施設

 

3.ミキサー・・・材料を混ぜてコンクリートを製造する装置

 

4.積み込み設備・・・生コンを車両に積み込む設備

 

5.事務所、作業員休憩所など

 

6.クレーン・・・海上からの受け入れの場合

 

 

 建物か構築物かの判断は微妙だが、一般に単なる設備を囲っただけのものは構築物になるため、5番以外は構築物と見てよいだろう。

 

 では次に大まかな売上を見て見よう。

 

 売上高=2023年の生コン価格20400円/㎥×7155万㎥÷3049工場=4.79億円

 

 売上総利益=売上高4.79億円×0.225(注)=1億800万円

 (注)20~25%につき平均値を取った

 

 不動産配分率(設備を含む)=売上総利益1億800万円×15~20%=1620~2160万円

 生コン業界の労働分配率は製造業平均に比べてかなり低いので、不動産分配に回せる余裕があることを考えて2160万円を採用。

 

 生コン工場の大半は自社所有物件なので、収益還元法には適さない。だが不動産所有と事業経営を仮想的に分離することで、自分が自分に家賃を払っていると考えることができる(経済学でいう帰属家賃)。

 

 つまり事業売上高から家賃を配分する訳だが、家賃を継続的に支払うためには固定且つ低めに設定する必要がある。素材は完成品よりも価格変動が激しいことも理由だ。

 

 ここではとりあえず年間2160万円とした。

 

 資産価格=家賃2160万円×(1-経費率0.20)÷利回り0.08=2.16億円

 

 なおこの中には生産設備が含まれるので、不動産価格は1.5億円ぐらいであろうか。

 

 生コン業界は比較的小さい企業が多く、1社1工場が一般的である。生コン搬入の時間的制約から、大工場による規模の経済が働きにくい一方で、参入障壁が低く、競合が激しい世界である。今は建築ラッシュ、生コン価格の高騰の恩恵があるが、不況になると一気に過剰施設化しやすい。装置産業は金属加工、食品製造、組み立て加工と違って、柔軟な生産が難しい。こういう業種は供給過剰になると投げ売りになりやすい。