自社ビルの鑑定評価 続編 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 前編では賃貸事例のない自社ビルでも複数の類似ビルの事業売上から負担可能賃料を求め、収益還元法を適用する余地があることを説明した。

 

 だが実際には簡単にはいかない。1企業=1事業所なら、会社の売上と事業所売上が一致して負担可能賃料が分かるのだが、本社と複数の事業所から成る企業は少なからずある。

 

 極端な例だと本社は経営と管理のみに特化し、販売は支店に任せるなど。そこまでいかなくても本社と支店に営業部門があることは珍しくない。これらの場合、オフィスビルを利用している本社の売上を求めることは難しい。

 

 間接部門は直接部門を通じて売上に貢献するため、コストセンターになるからだ。事業価値評価の本を読むと、管理部門のサービスを内部取引のように擬制して価値評価が可能だと書いてある。実際、管理会計がかなりの水準の会社以外は無理であろう。

 

 結局は複数の営業拠点にコストの配賦をしなくてもよい本社1拠点型の企業でないと売上想定は難しい。だが中規模以上の企業となると、複数拠点を有するのが一般的なのでそれすら適用困難だ。

 

 業種の一人当たり年商から計算できないだろうか?

 

 例えばA業種だと3000万円だとする。全社員数は300人だから、年商90億円だ。

 

 仮に支店全部で250人、本社が50人としよう。実際は支店の全員と本社の営業部門が直接稼いでいるが、業務を分断している訳だから、人数割りで考えると

本社分の売上=90億円×50/300=15億円となる。同様に業界平均原価率を使って売上原価を配分すると、本社の粗利益が出る。

 

 本社の粗利益=15億円×(1-平均原価率0.70)=4.5億円。

 

 不動産関係費を粗利益額の1/5とすれば、0.9億円となる。この企業の本社床面積を600坪とすれば、坪15万円という結果になる。月当たりは坪1.25万円だ。これには水道光熱費も含まれているので、家賃だけだと坪1万円ぐらいであろう。

 

 やや不正確なやり方なので、複数の業種から同様のやり方で計算する。10事例使えば、坪8000~10000円というように幅が狭くなっていく。その辺りが対象不動産の家賃相当額(坪当たり)であろう。