不動産の経済的減価 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 過疎地の幹線道路を通ると朽ち果てたチエーン店の跡地を見ることがある。

 

 撤退後に次のテナントが入らなかったのであろう。小さな町に複数の郊外ロードサイド商業地域がある場合、市場規模の小ささから一つしか残らないことが多い。バイパスが出来ると店舗がそちらに移転して既存商業地域が寂れる現象もその一つである。

 

 見たところ中心部の商店街とは明らかに寂れ方が違う。中心部も衰退が激しいものの、それでも廃業した店主が店舗兼住宅にそのまま住んでいたり、周辺の居住者が徒歩・自転車でやって来てコミユニティが存続しているのだが、寂れた郊外ロードサイド商業地域は住民が居住しておらず、周辺人口も少ないので、他の商業地域に商圏が浸食されると、守るべき本丸まで取られてしまいやすい。基本的に車で来店する場所なので、客は魅力のない場所にはわざわざ行かないものだ。

 

 不動産鑑定評価基準には次のように書かれている。

「経済的要因としては、不動産の経済的不適応、すなわち、近隣地域の衰退、 不動産とその付近の環境との不適合、不動産と代替、競争等の関係にある不 動産又は付近の不動産との比較における市場性の減退等があげられる。」

 

 全国チエーン店のロードサイド展開は1970年代から始まるが、本格化したのは1980年以降である。ダイワハウス系の会社がロードサイド店舗の開発業務をやり始めたのはその頃らしい。

 

 当時は未だ大店法による面積規制があったので、150坪程度の建物しか建てられなかったが、1990年以降の規制緩和により、大型新店舗が増加し、旧型の店舗は劣勢になった。家電販売業界で言うと嘗て売上日本一を誇ったコジマがヤマダ電機に抜かれたのは、店舗展開が早かった分、小型店舗が中心で1000坪を超えるヤマダ店舗に品物揃えで対抗できなかったことが大きい。

 

 既成市街地なら閉店しても別のテナントが入り、小商圏業態として再生可能だが、広域集客を狙う立地においては、小型店舗は業態が変わっても相当にきつい。だから放置され、廃墟化していく訳だ。

 

 ロードサイド店舗の営業が継続したとしても、20年契約のオーダーリースだと20年後に更新時期がやって来る。借手が更新を希望しなければ空家となり、その後、後続テナントが見つからないと廃墟化しやすい。

 

 他方、更新した場合でも、借主は家賃の減額を迫って来ることが多い。新築当初においては、借主の方が店を出したくて貸して頂くという感じであったが、その後、競合先が増えたり、立地が変化したりして、既に旨味がなくなっている。20年経つと多額の保証金も回収できる訳だから、この場所にこだわる必要がないのだ。

 

 家主は引き留めるために賃料値下げを提示するしかない。更新を拒否され、新テナントを募集しても、普通は賃料は大きく下がるはずだ。

 

 このような不安定性を抱えているため、盛業店以外においては、経済的減価が発生しやすいのではないだろうか。