自動車ディーラー店舗の鑑定評価 | 猫好きのブログ

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 自動車ディーラー店舗は特定事業用不動産である。

 

 このカテゴリーの不動産の賃貸は少ない為、売上高から負担可能賃料を求めるが、自動車ディーラー店舗はかなり厄介だ。

 

 ディーラーは独立資本であっても大手メーカー毎に系列化されいるものだが、どの会社の自動車を販売するかにより売上が異なる為、標準売り上げを出すのが難しい。

 

 大手メーカーの場合、以前は車種別にディーラーが編成され更に複雑化していたのだが、現在では複数の車種を扱っており、メーカーレベルでの標準化が進んだのであるが、メーカーが異なると当然、チャネル政策の内容が異なり、その差が売上に反映する。

 

 またメーカーと直接の契約関係のないサブディーラー、高級外車、スポーツカー専門ディーラー等、複数の種類もあり、複雑である。

 

 次に商圏の問題がある。自動車ディーラーも小売業である以上、商圏が存在し、実際、市内を複数の営業所毎にテリトリーを設定しているが、一般の小売業のように簡単にいかない。

 

 それはテリトリー外の客が購入することが少なくないからだ。営業マンとの個人的な繋がり、既存客からの紹介、法人契約などがあるのが理由だ。

 

 それでも自動車の総販売数、販売額は公表資料から分かるので、市の人口から市場規模を推計し、それを市内のティーラー店舗数で割ると1店舗当たりの販売額を掴むことが出来る。そして新車販売と部品・修理比率から1店舗の標準売り上げを計算する。

 

 全国の新車年間販売額=150万円/台×345万台=51.75兆円

 人口10万都市の新車販売額=51.75兆円×10万/1.2億=431億円

 

 市内カーディーラー数=全国2万店×10万/1.2億=17店舗

 

 1店舗当たりの新車販売額=431億円/17店舗=25.4億円

 

 結構売りますね。粗利は40%なので、10.16億円。これをメーカーとディーラーで分け合うので、ディーラーが半分取って5.1億円

 

 他方、新車売上とその他サービスの比率は7:3より、新車販売額7:その他3=25.4:Aより

 A=10.9億円。こちらはディーラーが全部とる。粗利は5割ぐらいなので、5.5億円

 

  以上よりまとめると、

 ディーラーの店舗の年商=新車25.4億円+その他10.9億円=36.3億円

 

 負担家賃比率は不明である。

 

 粗利=新車5.1億円+その他5.5億円=10.6億円

 販管費=年商36.3×0.27=9.8億円

 営業利益=粗利10.6-販管費9.8=0.8億円(営業利益率2.2%)*概ね2~3%とのこと

 

 全業種については粗利の2割が不動産経費の目安なので、10.6×0.2=2.12億円(年商の5.8%)。

 

  これを基に収益価格を出してみると、

 家賃2.12億円×(1-経費率0.25)÷還元利回り10%=16億円

     *一棟貸、20年前後の中古物件を想定し、経費率を0.25と高めにした。

 

 

 実感として高い気がするが、よく分からない。自動車ディーラーは非上場企業が大半なので、中古車販売の上場企業の財務データから資本コストを出し、それを修正して割引率や還元利回りを出すしかないであろう。

 

 流動性リスク+小型リスク+単一事業部門によるリスク増大効果などが加わるだろうから、利回りは10%を上回るかもしれない(ここでは検証しない)。

 

 また原価法による土地建物の積算も同時に行うべきだろう。これは全国平均値としての計算なので、地域差を反映していない。

 

 適当に数値を入れてみる。既成市街地の幹線沿いで以下の通り想定。

土地=坪50万円×1500坪=7.5億円

建物=坪60万円×750坪×(1-残存15年/耐用35年)×(1-観察減価0.15)=2.7億円

計=10.2億円

 

 

 収益価格は積算価格の1.6倍近くでましたね。

 

 賃料が高いのかもしれない。年間家賃2.12億円÷建物750坪÷12月=坪2.4万円/坪

 

 郊外ロードサイドを想定したが、やはり賃料が高すぎる。これは1店舗当たりの平均年商が高すぎることが原因だろう。全市内総年商をディーラー数で割って出したが、サブディーラー等メーカーの系列化にない店舗がカウントされていない可能性がある。

 

 売上を公表しているディーラーの1店舗当たり平均年商を出してみる。

A社  11.2億円(郡部が1/3を占める)

B社   7.2億円(郡部が60%を占める)

C社  18.9億円(都市部が中心)

 

 上記の推定値は36.3億円なので相当高い。想定したのはC社に近い。大雑把であるが、評価店舗の年商を20億円としておく。

 

 

 再度収益価格を計算すると、

 家賃=年商20億円×家賃比率0.058=1.16億円(月額坪1.3万円)

 

 収益価格=家賃1.16億円×(1-経費0.30)÷0.10=8.1億円

 

 

 修正収益価格は半分になってしまい、積算価格10.2億円を下回った。土地価格は7.5億円なので、下限値をやや上回る程度に過ぎない。

 

 評価実務上、特殊物件については土地建物一体としての市場性減価を行うことがある(根拠不明瞭なのだが、汎用性を欠くことによる市場性の減退の経験値のようだ)。

 

 自動車ディーラー店舗にも1割程度の市場性減価を行うと、9.2億円となる。はっきりいって何%が妥当なのかは分からない。少なくても1割ぐらいは減るだろうということで、上限値ぐらいの意味しかない。従って存続を前提とすれば評価額は8.1~9.2億円の間ぐらいと考えられる。