何故、不動産鑑定評価で事業用収益分析が必要か? | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 特定事業用不動産以外でも収益分析手法が役に立つことは多い。例を挙げて説明しよう。

 

 小都市の幹線道路沿いの大型の空き店舗が評価対象としよう(自用)。この場合、原価法と賃貸収益還元法を適用することになるが、機械的に当てはめると現実離れした評価額になりやすい。

 

 地元資本だと過剰スペースで買い手がいない。原価法で市場性減価をどのようにすべきであろうか?また相場より下げた賃料設定しても借り手は付くのか?

 

 では数区画に分けて賃貸することを想定したらどうだろうか(SC化)?

 

 単独店舗が中心の地域において分割賃貸しても借り手がいるのか?いたとしても地場の企業に運営管理できるだろうか?

 

 

 或いは営業面積を半分にし、残りをデッドスペースとしてゼロ評価にするのはどうだろうか?つまり建物の半分はタダという訳だ。

 

 このようにしても維持管理費は面積に比例して掛かる訳で、余分なコスト×建物の存続年数がマイナスされる。それに取り壊し費用も高く付くことを考えると得策ではない。

 

 

 次に全国チエーンが買う場合を想定してみよう。大手の場合は収益構造が地元企業とは異なる。投下資本利益率判断基準なので、取得価格が安ければいいというものでないのだ。ロードサイドの一等地に出店し、他のエリアには目も向けない店が多いではないか。

 

 従って賃料相場よりも売上効率の方が重要になる。売上に影響を与えるハード要因として、交通量、出入りの便、駐車場、地形、建物位置、オペレーションに必要な売場面積、バックヤードと売場との関係などがある。この条件を満たせば、大手は高くても買うか借りるかするはずである。

 

 そのためには、外食チエーン、物販チエーンなどを想定して、大まかな売上を予想する必要がある。もし近くに大手チエーンが出店していないとすれば、条件を満たしていない可能性がある。

 

 評価では事前に売れるかどうか不明なので、買う人の条件(特に収益性)を満たすかの見極めが必要となる。市場性の判断は次の段階だ。多くの業種が条件を満たすならば、自然と値段が吊り上がるが、一部の業種のみだと買い手優位の取引条件になりやすい。それは売り急ぎでも何でもなく、市場の需給関係の問題だ。

 

 普段からお店の立地を見ていると気づきがあると思う。タイや販売店はどこに多いとか、王将とやよい軒の出店に違いはあるかなど。

 

 業種の共通性がある一方で、同じ業種でも経営戦略の違いによるポジショニングもあるので、細かく見て行かないと混乱しやすい。