事業用資産評価の注意点 | 猫好きのブログ

猫好きのブログ

資格試験とその応用

 工場、営業所など立派に利益を上げている施設であるが、時価評価すると驚くほど低い評価額になることがある。

 

 これは今の利用者が立ち退き、第三者が事業に使用すると十分な利益を上げることが難しいのが主な理由だ。事業内容が企業によって異なる以上、同業者であっても使い勝手が悪いのだ。

 

 ではM&A(企業の買収)や事業譲渡だとどうだろうか?

 

 既存の従業員や設備をそのまま使うことが多い為、一般的には不動産の単独売買に比べて不動産価格は高くなるであろう。

 

 ただ価格が今一つ分からない。事業譲渡を前提として考えよう。まず従業員、設備、不動産等を一体として価格が決まる。ここでは10億円としよう。

 

 次に個別のパーツの引継ぎ価格を決める。

土地  2億円

建物  2億円

備品  4億円

 

 他にも従業員がいるが、これは資産でないため、計上できない。

 

 総額10億円-土地2億円-建物2億円-備品4億円=2億円

 

 差額が2億円となったが、これを営業権として貸借対照表に計上する。従業員の能力、仕入先や販路との繋がり、事業ノウハウ、将来の成長性といった無形資産をまとめたものである。

 

ではこの場合の土地、建物の価格は何であるか?

 

 不動産単独の売却価値=市場価値と必ずしも一致はしないであろう。何故なら、現利用者の収益力を新たな所有者が引き継ぐことが出来るからだ(単独売買の場合、リセットされてしまうため、別人が利用者になると収益性が低下することを思い出そう)。

 

 標準的な能力の持ち主が経営者となり、既存の経営資源を引き継いで経営した場合の資産価値が土地、建物の時価になると解される。

 

 この場合、何を前提としての価格なのかが曖昧だと、事業譲渡なのに市場価値前提の価格にしたり、営業権を不動産価格に含めてしまったりする可能性があるので、評価の方針をはっきりさせる必要がある。