「単純作業」はスキル不要か? | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 よく工場等の「単純作業」をバカにする人がいる。

 

 そういう人はよほど優れて自分に自信があるか、「単純作業」の経験のない人であろう。

 

 トヨタの期間工は寮完備・食堂もあって、年収4百数十万円稼げることになっているが、入社3カ月程度で大量の離脱者を出している。機械の動きに人間が合わせることの辛さもあるだろうが、それだけではないはずだ。

 

 例えネジ止めであっても入れる角度が微妙に違うと奥までネジが回転していかず検査で不合格になるものだ。この種の作業を早く正確に行うのは中々大変だ。

 

 知能には言語性知能と動作知能があり、後者は手や身体を動かしたり、運動する能力やその処理速度を意味する。正に期間工のやっている作業では動作知能が要求される。動作知能が低いと作業に時間が掛かり、更に身体への負荷も大きくなるため、ついていけなくなり、辞めてしまうという訳だ。

 

 もう一つ例を挙げよう。それはトラック運転手だ。運転手の大変なのは運転ではなく、積み下ろしの方だ。あの大きなトラックの荷台一杯に積み下ろしするだけで2時間ぐらい掛かる。それも長距離を走ってきた後に行う訳だから。

 

 では短距離はどうかというと、これまた大変だ。短距離はルート配送があるので、配送順を考えて荷物を積み込む必要がある。しかも積載効率を考えなければならないのでパズルのように頭で考えて行う。力任せに積み込むとコストが高くなり利益を出せなくなる。

 

また製品の性質により乗せる順番とか固定方法もあり、上手く出来ないと荷物が損傷し、トラブルの原因になる(ドライバーが賠償することもあるようだ)。

 

 このように世の中で「単純作業」のように言われていることはそれなりに複雑で経験が必要なものである。経験があると効率が高まりこなしていけるが、それが出来ない者は追い込まれて早期に辞めてしまう。

 

 パン工場のドライバーをやっている人が言っていた。パンといってもケースを段積みにして運ぶので50キロぐらいの重さになる。大学の食堂ともなると駐車場から搬入口まで遠く、50キロ持ったまま運ばなければならない。脱サラしてきて運転手になる人はいるけど、大抵は短期で辞めてしまうねえ。持ち方にはコツがあって、荷物の状態に応じて体に負荷を掛けないようにしている。素人ほど力づくでなんとかしようとするから、耐え切れなくなるわけだと。

 

 

 ま、デスクワーク中心のリーマンがいきなりやっても無理であろう。仕事に応じた体力がついていないし、コツも分からない。更にルート配送の合理的な順番、交通状況、地理勘もない訳だから、一気に考慮要因が押し寄せてパニックになる訳だ。