給料と雇用の関係を考える | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 夕張市破綻問題の本を読んで出ていたこと。

 

 破綻後に市が医師を募集したが、年収は2500万円。相場よりも500万円以上高い金額だった。破綻して金がなくても、医者がいないと健康と命を守れない。こういう事例を見ると医者の経済的な待遇が良くなる理由が分かる。

 

 でも応募者は僅か1名であった。本に札幌市内の医者の話が載っていたが、札幌市内でも1700万円ぐらいは貰える。これにアルバイトをやれば、2500万円ぐらい勤務医でも可能なので、夕張に行って苦労することを考えると、別に高いと思わないと。

 

 つまり幾らでも払う用意のある人がいる一方で、他にも職場の選択肢の多いことが、取引きにおいて医者が圧倒的に有利だということだ。

 

 もう一つの例を挙げよう。夕張市の水道は炭鉱会社から引き継いだ設備が多く、複雑である。従って適切に管理するには水道管理の資格者が必要だが、夕張市には2名しかいない。しかもこの2名は退職の意向を示しており、円滑な水道供給が危惧されている。

 

 水道は医療と並ぶ重要なインフラだ。では市は他の費目を削ってでも、水道管理の資格者に年収1000万円を保証して、慰留すればよいのではないかと思ったが、何もした形跡がない。

 

 医者とは随分違う。これは職種ごとに待遇が定められているからだ。医者の場合は公務員でも結構移動が激しい。転職を繰り返してキャリアを積むものとされているからだ。だから市当局も他の公務員と同じ扱いをすることができない。

 

 水道技術者の場合は、建築・土木職同様、一般技術職員扱いだ。給料等の待遇は事務職と同じ行政職で統一されていたりする。だから幾ら重要職員でも年収500万の人を1000万円にするわけにいかないのだ。ましては破綻した夕張の場合、残っても基本給4割カットとされている。とすれば、年収300万円になってしまうわけだから、それなら400万円で雇ってくれる工事業者にでも転職した方がましだという計算が働く。

 

 民間企業ですら普通に転職できるようになってきたのは、比較的新しいではないか。公務員の場合、年功序列・終身雇用だから、途中で転職すると待遇が急に下がってしまう。だから多くの人は定年まで同じ職場に勤めるのである。

 

 他方、雇う側から見ると、優秀な人材を確保できれば、平均的な人件費で高い成果を吸収することができるわけだ。これでは最初に就職した組織で一生の待遇が決まることになるから、新卒学生は超大手企業を第一に目指すのも当然である。

 

  とはいえ、超大手ほど倍率も凄いので、多くの人はある程度で妥協する。こうして新人君は就職し、3年以内に1/3が退職してしまうのである。