神童のその後 | 猫好きのブログ

猫好きのブログ

資格試験とその応用

以前、某市役所を訪問したときのこと、ベテランと思しきヒラ職員がお茶を出してくれた。よく見ると小学校の時の同級生でないか。彼は神童といわれ、性格も温厚だったので将来は偉い人になると思っていた。期待を裏切らず地元の国立大学を卒業し、某市役所に就職したと聞いていたが・・・。

 

 

普通は女性職員が出してくれるはずだが、周りを見ると男性ばかりだ。しかも若手は全くいない。従ってこの職場の係で末席の同級生がお茶を入れてくれたわけである。

 

この日常風景には自治体職員の採用抑制の結果という情報が含まれている。もちろん毎年の採用数はゼロになったわけではないが、少ない若手の配属先は市民対応の多い福祉、税務、住民票関係の部門が中心となるため、中高年層ばかりの部署が出てくる。

 

民間企業だと一定のキャリアがあると係長になるが、〇〇係という組織があるわけではない。従って課に多くの係長を配置することが可能である(極論すると、課長以外全員係長にしてもよい)。ところが役所の場合は、課の下にいくつかの係組織があるため、係長ポストが限定される。その結果、民間企業に比べてヒラ社員比率が高くなる。

 

いまどき会社で係長といえばそれほど高くない役職である。役所ではポストの関係で係長になれない人が大勢占めると、職員のモラルにも影響してくる。そこで係に係長待遇の主査という役職を作り出した。

 

当初は少なかった主査が年と共に膨張し、係員全員が主査という部署も出てきた。またある部署では係の下に任意組織である班を作り、主査を班長とする例もある。建前では係長と主査は同格であるが、現実には主査から課長補佐になる例は少なく、主査→係長→課長補佐という順に昇格していくことになり、課長になるのは50歳以上になってしまう(多くの人は課長になれず退職していく)。

 

公務員人気は現在でも続いているが、安定の背後にこのような現状があることを知らない人が多い。公務員にさえなれたら一生ヒラでいいという人もいるが、年功序列の世界において、一生ヒラというのはストレスが溜まると思うのだが。

 

公務員として就職する人は、公務員試験を通り抜けただけあって平均的な能力よりも高い人が多い。ところがポスト不足で長年ヒラ職員をしていると、リーダーシップの訓練をする機会を失ったり、仕事が惰性化したりするというマイナス面が出てくる。この同級生のような将来を嘱望されたような人でもせっかくの能力が生かせず終わってしまうことになる。

 

他方、高校の同級生だが、高校卒業後、大手ドラッグストアに就職した人がいた。彼は運動部のキャプテンだったので、体育会系の雰囲気に近い店舗の世界が向いていたのであろう。26歳にして店長になった。その後、大きな店舗の店長職を経て、現在本部の課長をやっている。彼はこのままいくと部長にはなれるだろう。運が良ければ役員も可能かもしれない。

 

ドラッグストア業界が伸びているとはいえ、高校卒業後就職して課長になった同級生に対し、神童といわれ将来が嘱望されたにもかかわらず市役所の平職員の同級生。この差には驚かされる。本人の能力というよりも、自分にはどうにもならない置かれた環境の差の大きさが人を変えてしまうことに驚かされた。