かりそめ | 東京夜時

東京夜時

宇都宮秀男によるコラム。月木更新。

佐渡に行ってきた。

新潟からフェリーでおよそ1時間。
車を走らせていると、岩にへばりつくように真っ直ぐに生えた松。



さらに走らせていると「願」の地を発見。



そこは静かな地元の海だった。
海岸は美しくもあり、神々しくもあった。





すぐ近くに大野亀というデカい岩があった。
岩というかもはや丘である。

心地のいい場所だった。







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時代小説の傑作を多く生み出した作家・藤沢周平。

かつて作家になる前、食品業界紙の記者をしていた。
名を成してから、旧知の社長に伝記の執筆を頼まれた。
迷った末に引き受けた理由として、こう述べている。

「15年間、その業界から暮らしの糧をもらったことを、
 かりそめに思うべきではないという気持ちが強かったからである」

何事もかりそめに思うかどうかは
他人が決めることではなく本人が決めることだと気づかされる。

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僕が勤めていたインテリジェンスという会社から
多くの仕事の依頼がある。

それをかりそめに思う人もいるかもしれない。
でも、元来、「働くということ 生きるということ」に興味がある。

人はどう生きるべきか、
どうやって職業選択をして、選んだ道でどう生きるか。
伝記を買いあさって読みふけるのが好きだった。
夏目漱石の「職業学」の考えにも心酔した。

そのテーマはインテリジェンスにいた頃も、今も変わっていない。
当人にしてみれば、映像というアプローチでそのテーマに関われることは
ありがたい限りだ。

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東京夜時も「働くということ 生きるということ」を
テーマに書くことがよくある。

また、何のオチもない旅の話を書いたり、
旅とは何の関係もない作家のエピソードを書いたり、
かりそめの備忘録として書くこともよくあるので、
あしからず、おつきあいください。